2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Quality Assurance of Higher Education in the Arab States: Nation, University and Market
Project/Area Number |
18K13099
|
Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
中島 悠介 大阪大谷大学, 教育学部, 准教授 (60780939)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 高等教育 / 質保証 / アラブ諸国 / エジプト / サウジアラビア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アラブ諸国における高等教育質保証の様相を明らかにすることを目的とし、令和2年度は主にアラブ首長国連邦(UAE)とカタール国(カタール)における外国大学分校の質保証を包括的に検討するとともに、アラブ地域に位置するエジプト・アラブ共和国(エジプト)およびサウジアラビア王国(サウジアラビア)における質保証制度を含めた学位制度の整備状況を整理した。 UAEとカタールにおける外国大学分校の質保証の状況については、提供国および受入国の第三者質保証機関や、国際的に展開する専門団体といった多様なアクターが分校の質保証に関与している状況を明らかにした。また、サウジアラビアやエジプトの学位制度および大学における対応を検討し、欧米諸国をモデルとして制度を構築しながらも、現地社会の文脈を考慮して一定のアレンジがなされている状況を明らかにした。 これらの成果は、中島悠介『湾岸アラブ諸国における外国大学分校の質保証』(東信堂、2021年)において公表した。また、本研究と部分的に重なる形で、中島悠介・内田直義「サウジアラビアにおける学位制度」『後発国における大学院教育及び学位制度の導入と変容に関する比較研究(中間報告書第5冊)』(課題番号17H02680、研究代表者:南部広孝、京都大学大学院教育学研究科、2020年、161-191頁)、「エジプトにおける大学院教育と学位制度」『後発国における大学院教育及び学位制度の導入と変容に関する比較研究(最終報告書)』(課題番号17H02680、研究代表者:南部広孝、京都大学大学院教育学研究科、2021年、137-155頁)としても刊行されている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、UAEおよびカタールといった湾岸アラブ諸国における外国大学分校を対象に、それらを取り巻く質保証の状況について、国家(提供国や受入国)・大学(本校や分校)・市場(現地社会)を含めた多様なアクターの関わりを考察し、外国大学分校がそれらのアクターによる関与を統合しながら質を構築しているということを示し、図書として刊行することができた。また、サウジアラビアやエジプトといった国ぐにを対象とし、高等教育における学位制度を整理する中で、国家による質保証制度の概要を示したことに加え、大学における取り組みを事例的に検討することができたことから、ある程度本研究を進められたと考えられる。 その一方で、新型コロナウイルス禍の状況においてエジプトやサウジアラビア・ヨルダン等における現地調査ができなかったこと、また、コロナ禍に関連して本務への対応に迫られていた状況があったことから、高等教育機関を取り巻く質保証のアクターの関与の様相について十分な情報収集および考察ができなかった点で、当初予定していた最終年度時点における本研究の進捗状況はやや遅れている。令和3年度に本科研の延長が認められたことから、可能であれば上記の国ぐにへの現地調査を実施し、情報収集に努める。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、エジプトやサウジアラビア、ヨルダン等における高等教育機関の内部質保証の仕組みをさらに精緻に明らかにしていく。特に、国家的な第三者質保証機関に対応する形で、どのように高等教育機関の内部質保証の仕組みが整備されているのか、また、高等教育機関の質保証において、国家や大学以外のアクターがどのように関わっているのかを、文献資料を中心に調査を進める。加えて、新型コロナウイルス禍の状況ではあるものの、可能であればこれらの国ぐにで現地調査を実施することを予定しているが、調査が困難である場合には、zoom等を通した遠隔による関係者へのインタビュー調査を想定している。 これらの調査を実施しつつ、アラブ諸国における高等教育質保証に関わるアクターの関与の様相について、引き続き考察を進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
本科研はアラブ諸国における高等教育の質保証の様態を明らかにすることを目的としており、そのため現地における調査が欠かせないが、令和2年度は新型コロナウイルス禍のために海外渡航に大きな制限があり、予定通りに研究費を使用することが困難であった。加えて、国内学会・国際学会への旅費としても使用できなかったため、次年度使用額が生じることとなった。 今年度は、再度現地調査や国際学会への参加を予定しているが、昨年度に引き続き海外渡航が困難である場合、国内学会への旅費や遠隔調査に必要な機材の購入、紙および電子媒体の資料の購入、最終報告書の印刷費などに研究費を使用する。
|