2021 Fiscal Year Research-status Report
子どもの権利擁護機関の設置構想:子どもの声を反映させる政策改善過程分析を通じて
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18K13113
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
畑 千鶴乃 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (60550944)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 子どもアドボカシー / 子ども・ユース / 検証・調査 / 当事者ユース / セルフアドボカシー / カナダ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、18・19年の訪問で得たオンタリオ州とブリティッシュコロンビア州のアドボカシー機関に関する資料を分析した。また資料の補足で、アルバータ州の資料も含んで分析した。目的は子どもアドボカシーシステムで重要な柱となる、子どもの権利救済の手法「検証・調査」について内容を明らかにし、子どもアドボカシーと検証・調査の2つの活動がどのように互恵的な関係にあり子どもの声を表に出し、子どもの問題を解決する両輪になり得るか解明することである。結果として以下を把握した。 第一に、カナダ全州で州政府からサービスを受ける子どもやユースの事故や死亡事件を調査し、この事件から学ぶべきことを明らかにするため検証・調査部門が設置されていた。そこでは州政府からサービスを受けている子どもやユースが重傷を負う、または死亡した場合、同じような事件が起こらないようにするために何を改善すべきか検証、調査し、勧告を行う権限が付置され、専属の専門家が配置されていた。この検証・調査は、サービスを受けている当事者である子どもやユースから調査依頼があり調査に乗り出すこともあれば、機関側が必要だと判断して主体的に調査に動く場合もあった。 第二に、その調査の対象となっているユースや子どもが参画する「ユースアドバイザリーグループ」を立ち上げ、チームへ助言するための、ユースの生の声、生きた経験を集めて表に出す場を設け、その声を反映させた報告書のとりまとめが行われていた。 結論として、カナダでは当事者ユースの声を反映させて検証・調査チームによりとりまとめられた調査報告書を、さらに当事者ユースが活用して、彼ら主導で公聴会やタウンミーティングを開催し、この問題を広くコミュニティに知らせ問題解決への関心を喚起するという、ユース自身によるセルフアドボカシーと調査・検証の互恵的な子ども・ユースアドボカシー実践を切り拓いてきたことが実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍でカナダへ訪問調査することができなかったが、オンラインで調査、交流を再開することができたことで、2018年・2019年の訪問時に収集した資料に記載されいている内容を詳細に分析することができ、且つ不明な点において確認を詳細に行うことができた。 またコロナ禍になったことで起きた子どもや当事者ユースの暮らしの変化や、オンタリオ州政府がこれまで実施してきた子どもやユースに向けた支援を、当事者ユースと共同して再検討し新しい枠組みを開発しようとする動きを追跡することができている。またそれを実現しようとする当事者ユース団体と常に交流することができている。これらの研究活動の前進から、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ対応が進展しオンタリオ州に訪問できるようになり次第、訪問調査を再開する。それまでは、これまでの訪問調査によって得た資料の翻訳と分析を進め、不明な点をオンラインミーティングにて確認し、現状を把握するというWEBでのヒアリング調査の手法を取る。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によりカナダへ訪問することが困難となったため訪問調査を次年度へ持ち越すこととした。渡加することができるようになった際には、速やかに訪問調査を再開する。また訪問調査において円滑に遂行できるよう、オンラインによるヒアリング調査や交流を継続する。
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Research Products
(1 results)