2019 Fiscal Year Research-status Report
保育労働と介護労働の比較研究ーケア共通資格の検討を中心に
Project/Area Number |
18K13135
|
Research Institution | Kawaguchi Junior College |
Principal Investigator |
井上 清美 川口短期大学, その他部局等, 教授 (30517305)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ケア労働 / 保育労働 / 介護労働 / ケア共通基礎資格 / ラヒホイタヤ / フィンランド |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度はフィンランドのヘルシンキ近郊で以下の現地調査を実施した。期間は2019年8月~9月である。①職業学校、教育庁へのヒアリング及び資料収集:職業学校(KEUDA、DIAKONIAOPISTOの2校)では、ラヒホイタヤ養成課程の専門教員及び実習インストラクターの教員に対し、ラヒホイタヤ養成課程の専門選択の現状や就職状況等についてヒアリングを行い、共通課程で使用されているテキストやシラバス等の資料を得た。教育庁へのヒアリングでは新カリキュラムへの移行とラヒホイタヤに求められるコンピテンシーについての見解を得た。また、2018年より職業学校において子ども教育指導員の養成コースが創設されたため、その概要や募集の現状について情報を収集した。②ラヒホイタヤとして働く人々へのインタビュー調査: ヘルシンキ近郊で働くラヒホイタヤを対象にインタビュー調査を実施した。対象者はラヒホイタヤの資格を取得した12名でフィンランド人7名、日本人5名を含む。ラヒホイタヤの8種類の専門選択の内、子ども・若者ケアを選択した者が5名、高齢者ケアが3名、看護が2名、メンタルヘルスが2名であった。子ども・若者ケアを選択した5名はいずれも保育士として保育所で働くことを希望しているものの、実際に働いているのは2名である。若年層では上位学校への進路が選択され、中高年層では経済的事情により、子どもケアよりもニーズの高い介護現場が選択されていた。保育領域においてはその専門性が生かされているとは言い難い現状を確認した。以上の成果は2020年5月の日本保育学会第73回大会で報告した。 保育労働の専門性については既存研究を整理し、子育て支援労働との違いについて考察した(井上清美,2020「子育て支援労働の専門性を問う-ケア労働の再編と分業化の中で」相馬直子・松木洋人編著『地域子育て支援を労働として考える』勁草書房)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的のうち、日本における保育労働の専門性については既存研究を整理し、子育て支援労働の専門性との違いについて当事者の語りを用いて分析した(井上清美2020「子育て支援労働の専門性を問う-ケア労働の再編と分業化の中で」相馬直子・松木洋人編著『地域子育て支援を労働として考える-子育てひろば・一時保育を支える人々』勁草書房) また、実績概要で述べたように、ケア共通資格についてはフィンランドにおける現地調査を実施し、ラヒホイタヤ養成課程において保育の専門性、介護の専門性のそれぞれに求められるコンピテンシーの内容や、教育庁の見解を明らかにすることができた。さらに、ラヒホイタヤとして働く人々へのインタビュー調査を通じて、ケア共通基礎資格を日本に導入する際の問題点や限界について考察するための資料を得た。同時に、2018年度に創設された子ども教育指導員の資格について、創設の経緯や学生募集の状況についての情報など、今後の研究計画につながる知見も得られた。 以上の点においては、概ね当初の研究計画に従って進められている。研究計画では、日本における介護労働の専門性について考察するため、介護福祉士を対象とするインタビュー調査を2019年度内に実施することになっていたが、海外調査の準備と両立することができなかった。2020年度内に介護福祉士へのインタビュー調査を実施し、介護労働者の身分保障や介護労働に対する意識、介護労働の専門性について明らかにする予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
進捗状況で述べた介護福祉士へのインタビュー調査については、新型コロナウィルスの影響により対面での実施が難しくなったことから、オンライン調査の可能性について検討する。実施の見通しが立てば、2020年8月~9月にかけてインタビュー調査を行い、介護労働の専門性についての知見をまとめる。 2020年10月以降はこれまでの成果を整理し、最終報告書「保育労働と介護労働の比較研究」を作成する。また、フィンランドでの現地調査から得られたデータを分析考察し、論文として学会誌に投稿する予定である。
|
Causes of Carryover |
海外調査の実施準備に想定外の時間がかかり、国内調査が未実施であるため。国内調査はインタビュー調査を予定していたが、対面での実施が困難な場合はオンラインでの実施を検討する。その場合でも費用に差は生じない見込みである。
|
Research Products
(2 results)