2018 Fiscal Year Research-status Report
イスラムの文化的特色に立脚した美術教育の解明を目指した基礎的研究
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18K13145
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
箕輪 佳奈恵 筑波大学, 芸術系, 特任助教 (60784915)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イスラム / 美術教育 / 多文化 / 南アジア / 中東 / フィールドワーク / 教育人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多地域でのフィールドワークを通して収集した「美術教育を通したイスラムの実践」事例を、イスラムの教義と対応させて構造化することによってイスラム文化に即した美術教育の基礎理論を生成するとともに、それらを横断的に比較して、イスラムと美術教育との関係性をめぐる地域性を明らかにすることである。 本年度は、本課題採択以前の時期も含めた過去数年で収集した研究資料の整理と分析、およびそれらを用いた研究発表に取り組んだ。モルディブ、英国、エジプト、それぞれ異なる特色をもつイスラム文化圏3カ国におけるこれまでのフィールドワークを通して、ムスリムである教師たちにはイスラムに基づく価値観・習慣等を美術教育に結びつけて解釈し、自らの教育実践に宗教的価値を付加する傾向があり、それは各地域の特色を反映しながらもある程度の一般化が可能な現象であることを明らかにしつつある。「美術教育を通したイスラムの実践」と独自に定義したこの現象の理論的な解明を目指し、「美術科授業」「イスラムの実践」「宗教的根拠」の関係性を暫定的に構造化する作業を中心に行った。この成果の一部は、国際美術教育学会(InSEA)ヨーロッパ地域大会(於:ヘルシンキ、フィンランド)において口頭発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2019年度前半までに各地域でのフィールドワークを全て完了させる計画であったが、エジプトにおける調査許可が未だ下りず(2017年度末に現地教育省に申請済)、予備調査から先に進めることが出来ていない。英国での調査を場所や対象を変えて再度実施する、あるいは別の国・地域での調査の可能性を探るなどして、研究の軌道修正を図りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度内に全てのフィールドワークを完了させ、「美術教育を通したイスラムの実践」の本格的な理論化および地域間比較に出来るだけ早く取りかかる。ただし、海外フィールドワークは上に述べたように計画通りに進まないことも多々あるため、方針を修正する可能性も考えておきたい。例えば、これまでは汎用的な理論生成を目指して可能な限り多くの国・地域でのフィールドワーク実施を試みてきたが、調査地を拡大するのではなくこれまでの調査を同じ場所で継続して実施することで、地域研究として深めてゆくという方向転換も必要となってくるかもしれない。いずれの方針で進めるにしても、研究資料の量・質ともに充実させることは必須である。よってまずはフィールドワークの準備と実施に注力したい。 なお、2019年度における研究発表の機会として、国際美術教育学会(InSEA)世界大会(於:バンクーバー、カナダ)での口頭発表を7月に予定している。
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Causes of Carryover |
2018年度中に計画していたフィールドワークが未実施のため、繰越が生じた。2019年度以降のフィールドワーク実施経費に充てたい。
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Research Products
(1 results)