2018 Fiscal Year Research-status Report
イギリス音楽教育における教員養成と職業専門性継続教育(CPD)の成果と課題
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18K13152
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
森尻 有貴 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (90757478)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 音楽教育 / CPD / 教員養成 / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イギリスの音楽教育における職業専門性継続教育(CPD)に対する社会的な取り組みを調査し、その可能性について検討することを第一の目的としている。当該年度は、まずイギリス政府により公表された文書を中心とした検討、及び関連研究における文献研究を行った。2010年のアカデミー法の発令およびEnglish Baccalaureate (Ebacc)の発表により、音楽教育の様相が大きく変化したことから、2010年以降の動向を中心に検討を行った。特にEbaccは、中等教育修了試験(GCSE)の受験者の減少や中等教育での音楽教育の選択の減少に影響を与えたと考えられる。また、実際に音楽科教育や教員へのCPDの現状について理解を深めるため、イギリスの複数の音楽教育機関へのフィールドワークを実施した。学校教育機関とは別に、様々な機関により音楽教育が支援されている現状がある。それらの機関がどのように学校の音楽科教育、また教師へのCDPの機会の提供を行っているかをインタビューにより調査し、実際のワークショップへの視察等を行った。学校のエリア毎に設置されているMusic Hubと言われる機関が、その地域の音楽科教育を支援する上で大きな役割を担っているが、それらのHubと協力し、様々なプロジェクトを提供する外部機関の取り組みの様相が明らかとなった。アウトリーチを始めとする音楽教育を外部から取り入れる音楽科教育が盛んに行われる一方、Hubの取り組み方には差があり、それらが学校での音楽科教育の質にも影響を与えることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、文献研究において、主に2010年以降の資料を参照した。それらは、政府が発表している資料を始めとし、研究論文、調査レポート、新聞等から幅広く情報を収集するよう努めた。また、最新の現状に対する知見を得るため、実際の指導現場への訪問と参観により、現場の教師や指導者へのインタビューを行い、現状と課題への理解に努めた。また、次年度以降の質問紙調査やインタビュー調査の可能性について、データ収集が可能な方法や対象者についても検討の機会を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
文献研究、及びフィールド研究で得た成果をもとに、より包括的なデータ収集に向け、その調査方法及び調査対象者について検討を進めていく。初年度に引き続き、イギリスでの教育現場への訪問及び観察により、教育内容の理解および検討を行っていく。インタビュー調査および質問紙調査等に関して、特に、倫理的な問題により調査の実行が難しいとされる場合は、対象者の変更、または対象人数の変更に伴う研究方法の再検討等も視野に入れている。研究方法に関しては、質的なデータと量的なデータの双方から検討するMixed methodを検討している。また、イギリスでの教育方法が日本の教員養成に、どのように貢献し得るかについても調査を行い、海外での音楽教育の方法を我が国に取り入れる汎用性について特に検討したいと考える。
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Causes of Carryover |
イギリスでのフィールド研究の協力者が謝金を辞退したことから、人件費・謝金については執行がなかった。また、次年度には、国際学会での発表が受理されていることから、そちらの発表に伴う旅費・交通費に使用する計画である。
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