2019 Fiscal Year Research-status Report
イギリス音楽教育における教員養成と職業専門性継続教育(CPD)の成果と課題
Project/Area Number |
18K13152
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
森尻 有貴 東京学芸大学, 教育学研究科, 講師 (90757478)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イギリス / 音楽教育 / 教員養成 / CPD / 職業専門性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、イギリスの音楽教育における教員養成と職業専門性継続教育(CPD)の現状と課題において検討することである。当該年度の研究成果は、これまでの研究成果の一部を国際学会、国内学会で発表したことと、イギリスにてフィールドワークを実施し、教育現場の実態を把握し、インタビュー調査を実施したことが主である。 2019年7月にマカオで行われたアジア太平洋音楽教育会議(The 12th Asia Pacific Symposium for Music Education Research: APSMER) にて、イギリスの音楽教育メソッドを例にあげ、教員養成における影響を主に創造的音楽学習の観点から調査した結果を報告した。教員養成における学生の音楽への定義や理解において、日本の既存の音楽教育に齎す海外からの視点の有意義性について検討した結果、教員養成において多くの有効性が得られる可能性がある一方、実施や導入に関しては、制度的な課題も残ることが示唆された。また、中等教育における指導事項の検討の一部を国内学会において発表した。 2019年9月~10月、イギリスの音楽教育現場にてフィールド研究を実施し、教員に対して研修を実施する音楽教育団体への訪問や、研修の見学や指導者へ、イギリスのCPDにおける現代的な課題についてのインタビューを行なった。これらの調査からは、国の定める法的な体制も相まって、学校における音楽教育や音楽教師の位置付けが変容してきていることや、CPDにおける参加や学びの機会が教師の仕事の様相から影響を受けていることが明らかとなった。また、学校教育における音楽教師の役割やその専門性においても多様であり、社会的な影響だけでなく、学校毎の音楽教育に対する価値づけが影響していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教育省(Department for Education: DfE)の発行する資料や声明、報道機関による資料はオンライン上でも入手が可能であり、文献調査に関しては概ね順調に進展している。実際の教育現場の視察においては、2018年度および2019年度は可能であったため、現場の様子を現実的に捉えることができ、指導者の声もより臨場感を持って聞くことが可能であった。それらのフィールド研究を通して、政府の発行する文書や学術研究を参照した上で解釈が可能となっている。昨今のコロナウイルスの影響で、音楽教育現場には大きな影響があり、それは教員養成やCDPの研修においても例外ではないため、現在イギリスの関係者より情報収集をし、最終年度の研究計画へ反映させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今までの研究成果を踏まえ、より総括的なデータとしてまとめるために、対象を限定して調査を行う予定である。当初は、イギリスでのフィールドワークを予定していたが、昨今のコロナウイルスの影響で渡英が難しくなる可能性もあると考えられる。そのような影響があった場合を想定し、これまで視察を行なった研修での指導者へのオンラインインタビューやオンラインを利用した調査を検討している。これまでの文献研究や資料調査、フィールド研究の成果を合わせ、さらなるデータを追加した上で、包括的に考察し、研究のまとめとする予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度では、研究協力者が謝金を辞退したことなどが、使用額が減少した理由としてあげられる。次年度は、インタビューなどに伴う研究協力者への謝金として使用する。また、フィールド調査や学会発表を現時点では予定しているが、コロナウイルスの影響によるフィールド調査が難しくなる場合もあり、その場合は旅費が減額することが見込まれる。
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