2021 Fiscal Year Research-status Report
イギリス音楽教育における教員養成と職業専門性継続教育(CPD)の成果と課題
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18K13152
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
森尻 有貴 東京学芸大学, 教育学研究科, 准教授 (90757478)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 音楽教育 / イギリス / 教師教育 / CPD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においてはこれまで、2010年にイギリスで制定されたアカデミー法やEBacc(English Baccalaureates)の影響により、音楽教育の重要性が社会的地位として厳しい状況に置かれていることが明らかになってきた。また、イギリスで発行されたNational Plan for Music Education (NPME)の声明後、レビュー期が設けられていた時期であることから、本年度はそれらの動向に関する調査及び音楽教育への影響について主に調査を行なった。とりわけ本年度は、コロナウイルス感染症の影響よりフィールドワークの実施が困難と判断し、主に民間団体や政府の公的機関から発行された声明や報告書等の検討、インタビューの追加実施を主に行なった。 2011年に教育省より発表されたNPMEは、国として音楽教育の在り方やその推進について記したものであり、レビューを受けて新しいNPMEが2022年に発表される、とされている(元来は2020年に改訂版が発表されるとされていたものの、パンデミックの影響で遅延が生じた)。Call for Evidenceと呼ばれたレビューは、民間から広く意見を求めたものであったが、その内容は、初等教育に比べるとKeystage3において音楽教育が学校のカリキュラムの中で適切に実施されることが困難であること、器楽のレッスンやアンサンブルの機会に限界があることなどがある中、CPD(職業専門性教育)を充実させ教員の質を向上させることへの課題も含まれていた。地域に設置されたMusic Hubと学校側の協力体制の中で推進される音楽教育において、学校に常駐する教師の音楽的資質を向上させることが根本的に重要であることを示唆する結果が含まれていると読み取れる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はこれまで、文献調査をはじめとし、イギリスでのフィールド調査による研修の見学、インタビューなどを行なってきた。コロナウイルス感染症の影響により現時点ではフィールドワークの実施が困難であるが、政府の声明発表や現地の研修などもそれに伴い変化や遅れが生じているため、現実的な状況に合わせて実施してきている。コロナ禍であっても、オンラインビデオシステムを利用したインタビューなどの実施、政府や民間機関の発行する声明や報告書、レビューなどの分析を進めることにより、実態調査を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年に正式発表される予定である改訂版のNPME、及びそれに対する音楽教育関連の民間団体、学校等の反応や意見を調査する予定である。特にCall for Evidenceの中で課題としてあげられていたCPDに関してどのような措置が取られているのか、今後、イギリスの音楽教育の目指す方向性や音楽教育そのものがどのような位置づけで推進されていくのか、その中でCPDや教師教育の課題や成果はどのように捉えられているのかを焦点化し、必要に応じて関係者へのインタビューを行う。またイギリスの音楽機関であるMusicians UnionやISM(Incorporated Society of Musicians)による調査なども注視し、それらのリソースを多角的に分析することにより現状把握に努めたい。 また、これらの動向はイギリスの教育課程における試験であるGCSEやA-Levelとも関連があることから、試験そのものや試験内容に応じた授業の展開を行う教師側の視点に関しても検討を行うことにより、イギリスが直面する音楽教育の課題に関して包括的理解を目指すこととする。
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Causes of Carryover |
本研究は元来の研究期間延長手続きを行なった関係で(理由:コロナウイルス感染症拡大のため)、本来予定していたフィールドワークによる旅費等への使用が発生しなかった。次年度使用額に関しては、引き続きフィールドワークが難しい状況にあることから、資料の収集やインタビュー調査の謝金などに使用する計画である。
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