2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Life Stories of Teachers Using Social Issues in Class
Project/Area Number |
18K13155
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
村井 大介 静岡大学, 教育学部, 講師 (80779645)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会的な課題 / 教師 / ライフストーリー / 授業 / 教材 / ESD / 実践習慣 / パレーシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、授業で環境や平和、人権等のESDとも関連の深い社会的な課題を取り上げる際に、教師はどのように課題への切実さや見方・考え方を深めて、希望(=実現したい願い)を形成しながら、授業を開発し実践してきたのかを明らかにすることである。 2022年度はこれまでのインタビュー調査の成果を総合しながら考察を深めた。特に①取り上げる社会的な課題を如何に選択したか、②取り上げる社会的な課題に対する切実さを教師自身は如何に形成したか、③取り上げる社会的な課題に対する見方・考え方を如何に深めたか、④授業で社会的な課題を取り上げることを通して実現しようとした願いは何か、⑤社会的な課題を教材化する際にどのような工夫や配慮をしたか、の五点に着目し、a)社会構造と教師の実践の関係、b)教師の実践習慣と社会問題の教材化の関係、の二点も考察した。 本研究では次のことを明らかにした。教師は、①自身のアイデンティティやこれまでのライフストーリーで直面した葛藤を背景に社会的な課題を選択し、②現地での調査や文献等の読み込み、当事者との出会いで課題への切実さを深め、③受益権・受苦圏に着目するといった見方や当事者と生徒を出会わせるといった授業方法を他の社会的な課題を取り上げる授業にも転化させている事例がみられた。④教師は社会的な課題に対峙する児童生徒の変容を願いながら実践し、⑤そのためにも児童生徒が本音で話し合える場を設けることを重視する事例が複数みられた。 a)社会構造と教師の実践の関係については、「パレーシア」という概念に着目し、教師が社会的な課題について真理を語ることが、勇気を伴う、社会を批判的に捉え直す行為であることの一端を明らかにした。 b)教師の実践習慣と社会問題の教材化の関係については、教師の文化資本・社会関係資本に着目し、教師の社会関係資本やバルネラビリティが重要になることを明らかにした。
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