2020 Fiscal Year Research-status Report
「赤ちゃんとのふれあい体験」の効果的な実践プログラムモデルの開発
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18K13158
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
加賀 恵子 弘前大学, 教育学部, 准教授 (20805981)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 赤ちゃんとのふれあい体験 / 社会資源との協働 / 実践プログラムモデルの開発 / 家庭科教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、学校教育現場における多様な社会資源との協働による「赤ちゃんとのふれあい体験」の現状を明らかにするとともに、実践プログラムの開発・実施を通して有効性を検証し、効果的な実践プログラムモデルを提案することを目的としている。本研究は、三部からなり、第一に学校教育現場における「赤ちゃんとのふれあい体験」の動向把握、第二に実践プログラムの開発と検証、第三に実践プログラムの発信である。 2020年度は、研究の第二の段階であり、これまでの調査や得られたデータや知見から開発した実践プログラムを試行・検証する年と位置付けていたが、コロナ禍において人と人との密な接触が不可避である体験授業を予定通り進めることはできなかった。そこで、研究協力者である榊原氏や岡田氏との協働によって赤ちゃん人形を使った「赤ちゃんとのふれあい疑似体験」を試行した。プログラムには、助産師や子育て経験者の話、赤ちゃん人形を使った疑似ふれあい体験などを配置し、実施後の生徒の感想からは一定程度の成果が得られるものと判断された。 また、2019年に実施したドイツでのフィールド調査および関係教員へのメール調査を踏まえ、論文「地域の社会資源との協働による消費者教育-ドイツ・バイエルン州のLTTAによる授業実践を基に-」(消費者教育第40冊)にまとめた。参観した授業こそ消費者教育に関するものであったが、倫理的な行動について考え市民性を育むことをねらいとしていること、ヴュルツブルク大学の教員、地域人材、教員によって協働されていること、授業実践を広めブラッシュアップさせていく研修会の実施といったシステム構築がなされていることなど、本研究の実践プログラム開発につながる示唆が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の進捗が遅れている理由はコロナ禍であり、ほぼ1年の遅れが見られる。 これまでの研究の進捗状況は、以下に示す通りである。 (1)国内外の学校教育現場における先駆的な実践の動向調査。具体的には、①NPO法人ママの働き方応援隊「赤ちゃん先生プロジェクト」を活用した愛知県名古屋市の高校における実践、②行政が担う役割が大きいことが特徴である愛知県豊田市の中学校における実践、③子育て支援財団がNPO法人や学校を結ぶハブの役割を務めることが特徴である石川県小松市の高校における実践。④カナダ・ブリティッシュコロンビア州の学校教育現場における体験プログラムのマネージャーへのヒアリング調査、⑤社会資源との協働を特徴とするドイツ・バイエルン州の学校教育現場での授業観察及びメール調査 前述のように⑤の成果は論文にまとめたが、他の①~④の調査結果も含めてマクロな視点で実践プログラムや人的条件、管理運営といった諸条件を分析することは今後の課題である。 (2)「赤ちゃんとのふれあい体験」に関わる多様な主体の意識調査。体験活動に親子で参加した保護者へのメール調査を実施し、得られた知見の一部を「『赤ちゃんとのふれあい体験』に参加した保護者の意識と実態」(日本家庭科教育学会近畿地区会実践・研究発表会)で発表した。今後さらに研究を深め、論文化する予定である。 (3)実践プログラムの構想・実践。実践プログラムの試案を構想したが、前述のようにコロナ禍で実践ができなかったため、直接的なふれあい体験ではなく赤ちゃん人形を使っての「赤ちゃんとのふれあい疑似体験」の実践プログラムを試行した。結果、汎用性のある実践プログラムの複線化を視野に入れることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下(1)-(4)の事項に取り組む。 (1) 追加調査。これまでのフィールド調査やメール調査により明らかになった現状と課題について分析を進め、必要に応じて追加調査を行う。 (2)実践プログラムの試行。構想した実践プログラムを試行したのち、その有効性をアンケート調査やインタビュー調査により検証する。(感染状況によっては、直接的なふれあい体験の実施は困難になる可能性がある。その場合は、赤ちゃん人形によるふれあい疑似体験の実践プログラムにより実施する。) (3)実践プログラムの修正。(1)と(2)の結果を勘案し、実践プログラムを修正する。 (4)実践プログラムモデルの発信。発信の具体的な方法としては、①「赤ちゃんとのふれあい体験事業についての報告書」を作成し、現在学校教育現場で体験事業に取り組んでいる自治体に対して配布する。②研究代表者の大学のウェブサイトなどで公開する。③現職教員研修会や教員免許状更新講習などで紹介する。④本事業に携わる様々な主体を対象とした学習会を開催する。⑤学会での口頭発表や論文発表などの報告を行う。
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Causes of Carryover |
2020度は、コロナ禍のため予定していた追加調査や実践プログラム試行のための旅費、人件費、体験用消耗品購入はほぼ執行できていない。次年度に充当したいと考えている。
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