2019 Fiscal Year Research-status Report
共生社会の実現に向けた美術科教育の交流・共同・接続プログラムの開発
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18K13160
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池田 吏志 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (80610922)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 美術教育 / インクルーシブ / 特別支援教育 / 交流 / アート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、特別支援学校と一般学校・地域社会との連携・相互理解を促進する美術科教育の交流及び共同学習プログラムを開発すること、そして特別支援学校卒業後の接続プログラムを開発することである。 令和元年度には、インクルーシブな集団において多様な背景を持つ人たちが心理的に親密な関係を形成できるアートを用いた交流プログラムを開発・実施し、有効性を検証した。具体的には、中国から留学した聴覚障害のある学生と日本の大学院生とのより親密な関係構築及び美術の内容・方法の学習が同時に実現する、アート・ワークショップの手法を用いた交流プログラムを開発・実施した。プログラムは、G.W.オルポート(1958)の接触理論を理論枠組みとし、A大学大学院教育学研究科に在籍する大学院生3名と、中国から留学し同大学院研究生として在籍している聴覚障害のある学生1名を対象として全16回(90分/1回)のプログラムを実施した。事前の交流段階、事後の省察段階にも十分な時間を取り、活動の主となるワークショップでは、参加者が主体となって色や水墨画をテーマとした活動を考案・実施した。アクション・リサーチによる実践研究の結果、交流プログラムを設計する際の枠組みを6段階で示すことができた。また、アートを媒介とした交流は、感性的・感情的・直感的なやりとりが可能である点や、参加者が持つ文化的背景、生い立ち、価値観などを知るための端緒が活動に内包されている点が有効であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、障害の有無を含めた異なる背景を持つ人達による交流プログラムを実施できた。研究の成果として、交流における当事者性の涵養、事前段階の共感を基盤とした交流、多義的な解釈を許容するアートを用いた活動内容、通常授業への円滑な移行を見据えた省察など、今後、特別支援学校と一般学校との交流でも活用可能な成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、次の3点に取り組む。1点目は、特別支援学校卒業後の障害のある人および障害のある人をサポートしている人を対象に、作品等の制作及び美術展覧会等の鑑賞に関する実態調査を行う。2点目は、昨年度からの継続研究として、多様な背景を持つ人たちが親密な関係を構築できるための交流プログラムを開発・実施する。3点目は、美術教育を基軸として、複数の分野を横断する理論形成を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症の影響で、予定していた出張が2件キャンセルになった。2020年度には質問紙調査を実施する予定であり、残額はその費用に充てる。
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