2018 Fiscal Year Research-status Report
中学校数学科における批判的思考力を育成する系統的な学習単元の開発とその実践的研究
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18K13166
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
服部 裕一郎 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (50707487)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 批判的思考力 / 批判的数学教育 / 社会的価値観 / クリティカルシンキング / 社会的オ―プンエンドな問題 / 関数 / 前期中等教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
次期学習指導要領も公示され,ジェネリック・スキルとも呼ばれる「批判的思考力」はこれからの21世紀を担う子ども達に育成すべき「資質・能力」として,その重要性が高まっている。本研究は,中学校数学科に焦点をあて,子ども達の批判的思考力を育成する実践的な授業モデルを構築すると共に,子ども達の批判的思考力育成のための系統的な学習プログラムの開発を行うことを研究の目的とする。研究の方法としては,理論的基盤として,Skovsmose氏が提唱する批判的数学教育(Skovsmose,1994)の視座に依拠し,中学校数学科の「関数」領域における系統的な学習単元の開発を目指す。中学校3年間の数学授業において,子ども達の批判的思考力は,どのような教材で,どのように指導し,どのように発達していくのか?また,発揮された批判的思考は学習転移を如何に可能にするのか?これらの問いの解明に向け,具体的には,以下に述べる3点を研究課題として設定する。 Ⅰ.中学校数学授業における批判的思考力の特質及びその変容,学習転移の可能性の検証 Ⅱ.中学校数学授業において批判的思考力を育成する教授・学習方法の構築 Ⅲ.中学校数学科において批判的思考力を育成する学習単元の開発及びその実践 研究初年度である2018年度においては,批判的思考力の育成を目指した新たな社会的オ―プンエンドな問題(馬場,2009)の開発を目指した。中学校第3学年を対象にして開発した授業「携帯電話の購入」を2018年10月に実施することができた。授業実践においては,他者を説得しようと数学モデル(一次関数等)を構成しながら代替案を提出する生徒や,他者の意見を踏まえつつも熟考を重ね,自己の意見を他の根拠から更に強化しようとする生徒達の様相が見られた。これらの様相は,生徒達の公正な批判的思考の一旦といえ,本授業はある一定程度の批判的思考力の育成に寄与したと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように本年度は批判的思考力を育成する数学授業モデルとして,中学校第3学年を対象とした社会的オ―プンエンドな問題を開発し,授業実践を行うことができた。また,今後の課題としても,生徒達が発揮した批判的思考の様相分析において,「公正性」の観点からの考察が必要であるとの示唆も得ることができた。次年度には,日本数学教育学会第7回春期研究大会(於:金沢大学角間キャンパス)において,創成型課題研究テーマⅠ「数学教育における批判的思考力育成に関する研究-学校段階の異同に着目した考察」の登壇者として,研究発表を予定(2019年6月予定)しているとともに,日本科学教育学会第43回年会(於:宇都宮大学峰キャンパス)では,課題研究④「批判的思考力の育成におけるモデル・モデリングを核とした学習指導の貢献―数学教育と理科教育の事例から― 」のオーガナイザーの一人として登壇を予定(2019年8月予定)している。このことからも本科研の現在までの達成度としては「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては,中学校第1学年における批判的思考力の育成を目指した社会的オープンエンドな問題の開発である。そして,前期中等教育段階における生徒達の批判的思考の様相を,系統的に分析することを試みたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた文献の購入や消耗品の購入が3月末までに間に合わなかったため,幾らかの次年度使用額が生じた。4月以降に順次執行していく計画である。2019年度分として請求した助成金については文献の購入や研究発表・研究打ち合わせの旅費等に充当する予定である。
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Research Products
(10 results)