2020 Fiscal Year Research-status Report
移民学習論の再検討ー「残留日本人学習」の教材開発を通してー
Project/Area Number |
18K13169
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
太田 満 奈良教育大学, 社会科教育講座, 准教授 (80804385)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 残留 / 残留日本人 / 中国 / サハリン / フィリピン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、コロナ禍(緊急事態宣言等)により、海外(サハリンやカザフスタン等)や国内での聞き取り調査活動は滞ったが、文献調査を進めつつ、これまでの研究成果をまとめることができた。特に、フィリピン残留日本人に関する発表(学会での自由研究発表及び論文発表)ができたことが、2020年度の主たる研究成果である。また、中学生を対象に、残留日本人学習を実践し、教材の意義と課題について考える機会を得た。加えて、昨年度に刊行した拙著『中国・サハリン残留日本人の歴史と体験 ―北東アジアの過去と現在を次世代に伝えるために―』(明石書店、2019年)は、日本国際理解教育学会の学会誌『国際理解教育』(第26号、2020年6月発行)で書評として取り上げられた。また、日本社会科教育学会の学会誌『社会科教育研究』(第140号、2020年9月発行)では図書紹介として取り上げられた。2020年度の具体的な研究成果は以下の通りである。 日本社会科教育学会第70回全国研究大会にて、「残留日本人の過去と現在を考える社会科学習 ―フィリピン残留日本人理解のための授業構想―」と題する自由研究発表を行った。また、論文「フィリピン残留日本人理解のための教材開発―残留者のライフヒストリーに着目して―」(『奈良教育大学紀要』第69巻第1号、2020年)を発表した。このほか、研究内容に関連して、韓国国際理解教育学会第21回国際学術大会のシンポジウムにて、「WITHコロナ時代の国際理解教育―『難民』を通して考える―」と題する発表を行った。また、コラム「『ハーフ』か『ダブル』か―『人種』的に混合している人たちのための権利の章典」(中山京子他編著『「人種」「民族」をどう教えるか 創られた概念の解体をめざして』、明石書店、2020年)を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国やサハリンに留まらず、フィリピンの残留体験を聞き取り、教材開発を行い、中学生を対象とする授業実践を行った。研究内容は、国内外の学会で発表すると共に、論文でも発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、まず、中国やサハリン、フィリピン残留日本人を対象に、聞き取ってきた体験を全て教材化し、残留日本人学習に役立てていくことである。二つは、残留日本人だけでなく、残留朝鮮人についての調査を行い、残留日本人学習から、より普遍的な残留者学習への転換を試みることである。三つは、海外引揚を視野に残留を位置づけ、世界史との接続を念頭に、引揚・残留体験の教材化を進め、移民学習論を再構築することである。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、コロナ禍(緊急事態宣言等)により、海外(サハリンなど)での聞き取り調査活動ができなかったことである。次年度使用計画としては、海外での聞き取り調査費用等にあてることである。
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