2018 Fiscal Year Research-status Report
健康課題を持つ児童生徒の支援を目指した卒前多職種連携教育の開発と有効性の検証
Project/Area Number |
18K13170
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
齊藤 理砂子 淑徳大学, 総合福祉学部, 准教授 (90634907)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多職種連携教育 / 養護教諭 / 保健師 / 児童生徒の現代的健康課題 / コーディネート力 / チーム医療 / チーム支援 / チーム学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目的は、健康課題を抱える児童生徒の支援を目指した、卒前多職種連携教育プログラムの開発である。そのために2018年度は養護教諭及び保健師を目指す学生を対象に教育プログラムを作成・実施し、その効果を検証した。 学習プログラムは、先進的な多職種連携教育の特徴である「専門職間の個性、相違、ダイバーシティの尊重」「各専門職のアイデンティティと専門知識の明確化と維持」(CAIPE、2011)等を習得させることを目的とした(講義90分、養護教諭・保健師双課程の合同授業180分)。合同授業では、精神疾患を抱える子どもの事例を用いて、その子どもの支援について両課程の学生を交えたグループワークを行った。対象はA大学第2学年に所属する養護教諭課程及び保健師課程の学生合わせて46名とし、プログラム実施1週間前と直後に質問紙調査を行った。調査内容は、子ども・保護者の健康を扱う専門職の連携と協働に対する意識を問う専門職連携・協働尺度(山本、2017を参考に作成。以下連携・協働意識)と、チーム医療の協働意識を測る日本語版ATHCTS(山本ら、2012)、専門職連携について学ぶ準備性・志向性を測定する日本語版RIPLS(田村ら、2012)である。 質問紙を集計分析した結果、連携・協働意識では、尺度全体及び各下位尺度「子どもと保護者中心のケア」「専門職との連携・協働」に、日本語版ATHCTSは全体及び「ケアの質」「子どもと保護者中心のケア」に、日本語版RIPLSは「チームワークとコラボレーション」に有意な上昇が示され、本プログラムには他職種連携に関する意識の向上に対し、一定の効果があったことが窺われた。一方、連携・協働意識の「組織環境の整備」、日本語版ATHCTSの「チームの有効性」、日本語版RIPLSの「IPの機会」「専門性」には有意な上昇が認められず、質問票やプログラムの課題が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初、次の順序で行う予定であった。1.養護教諭のコーディネート力に影響を与える諸要因の探索、2.養護教諭を目指す学生を対象とした、コーディネート力向上のための演習プログラムの開発、3.小学校教諭、特別支援学校教諭、養護教諭、保健師を目指す学生を対象にした、卒前多職種連携教育プログラムの開発。つまり、養護教諭のコーディネート力に影響を与える諸要因を調査により特定(2018年度)した上で、養護教諭のコーディネート力向上のための演習プログラムを開発(2019年度)し、最後にそれをより多くの課程に拡大する予定であった。 しかし文献レビューによりある程度コーディネート力への影響要因が把握できたことや、A大学においてIPEを実行する機運が高まっていたことなどを踏まえ、2を先に実践するよう変更した。即ち2018年度は、養護教諭と学校外専門職との連携教育プログラムを作成・実行し、養護教諭と保健師を目指す学生を対象に実施し、準備性・志向性、他職種への認識・態度、連携に関する見解や知識・スキル等の変化を調べ、プログラムの有効性を検証した。 その結果、プログラムの有効性がある程度確認されたが、「実践的問題解決は協同学習の中でより効率的に学べる」「医療福祉専門職・教育関係者の役割・機能は、子どもとその保護者をサポートすること」等について、学生の理解を促すための工夫が足りない等、課題も明らかになった。また質問票についても、理解が困難な質問文が含まれており、今後はより本プログラムに即した、理解しやすい質問文への差し替えが必要であることが示唆された。 2019年度は1を実行し、その結果及び2から判明した課題を踏まえて、プログラム作成を行う予定である。以上より、計画当初とは異なる順序での進行ではあるが、遅れ自体は発生していないため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、質問紙調査により養護教諭のコーディネート力に影響を与える諸要因を探索(2019年度)し、その結果得られた要因に加え、2018年度の成果と課題を踏まえて、より洗練され、より多くの関連課程を対象とした卒前プログラムを作成し、その効果を検証する(2020年度)予定である。 具体的には、コーディネート力への影響要因の探索では、(1)養護教諭等へのインタビュー及び文献調査により、コーディネート力を規定する要因をリストアップした後、(2)養護教諭を対象とした質問紙調査により要因を特定する。 なお養護教諭によるコーディネートを潤滑に実行するには、コーディネート力というスキルだけでなく、コーディネートそのものを考察する必要があり、上記に加えて「養護教諭が行うコーディネート及び連携・協働を促進・阻害する要因」についても同様に調査する。 最後に、それらの結果を取り込み、医療や看護等コーディネート力育成研究の進んだ分野を参考にしつつ、さらに2018年度の成果も踏まえて、「小学校教諭、特別支援学校教諭、養護教諭、保健師を目指す学生を対象とした、コーディネート力の向上を目指した演習プログラム」を作成し、その前後変化を調べるための評価方法(質問紙等)について検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の当初の計画では、2018年度にインタビュー調査及び質問紙調査を行う予定であった。そのため、2018年度はインタビュー調査・質問紙調査に必要な人件費・謝金として20万円を計上していた。しかし、研究の順序が当初とは異なり、インタビュー調査及び質問紙調査は、2019年度に行うことになった。 そのため次年度は、インタビュー調査の謝金、質問紙調査時の人件費(データ入力、資料整理、結果の集計・分析)、郵送費(送付・返信用、催促状、お礼状)、調査票印刷費が必要となる。 さらに統計ソフト、デスクトップ型パソコン(ハードディスク、モニター)を購入する予定である。
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Research Products
(1 results)