2018 Fiscal Year Research-status Report
科学技術の社会的課題の解決に向けた生徒の対話・協働による共創を支援する教材の開発
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18K13172
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
内田 隆 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (20782163)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 科学教育 / 理科教育 / STS教育 / 科学技術社会論 / 意思決定 / 合意形成 / 共創 / コンセンサス会議 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、科学技術の社会的課題について多様な価値観とのバランスに配慮しながら対話・協働によって意思決定・合意形成し,新しい科学技術を取り入れた社会の在り方を「共創」する授業を行うための教材の開発である。2018年度の研究実績は以下の通りである。 (1)教材の試行版の作成および試行:実際の市民参加の場で使用されている手法であるコンセンサス会議を応用して作成した教材「生命倫理について考えるコンセンサス会議-生殖補助医療編-」に「共創」の視点を取り入れるため,本教材の使用経験のある高校生物教師を対象に調査を行い,改良版を作成した。作成した教材が県の教育センター主催の教員研修(中堅教諭等資質向上研修講座)に採用され講座で活用された。受講者及び指導主事の意見等を取り入れて改良を加え完成版を作成した。 (2)学会等における発表:作成した教材に関する研究・実践の成果等について,科学技術社会論学会年次大会,科学教育学会研究会南関東支部大会で発表した。 (3)論文・書籍による発表:教材開発の経緯等についてまとめた論文「生殖補助医療に関する意思決定・合意形成を図るコンセンサス会議の教材開発」を『科学教育学会研究会研究報告』で発表した。また,本研究の理論面をまとめた『科学技術社会の未来を共創する理科教育の研究』(風間書房)を刊行した。 (4)「遺伝子組換え食品について考えるコンセンサス会議」の作成:「生命倫理について考えるコンセンサス会議-生殖補助医療編-」の作成時に蓄積した知見・方法をもとにして,「遺伝子組換え食品について考えるコンセンサス会議」の教材を作成した。 これまでに,対話・協働によって新しい科学技術を取り入れた社会の在り方を「共創」する授業を行うための教材作成の基礎を構築して2つの教材を作成し,その成果を学会及び書籍等でひろく社会に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科学技術の社会的な課題について,生徒の主体的な議論を通して,意思決定や合意形成を図る授業を行うために,実際の市民参加の場で活用されている市民参加型テクノロジー・アセスメントの手法を(コンセンサス会議やシナリオワークショップ等)を応用した教材の作成をこれまで行ってきた。これまでに作成した教材を発展的に継承しつつ本研究課題を進めることができ,今年度は2つの教材を開発することができた。 次年度には,開発した教材の精度を高めるだけでなく,より汎用性の高い教材となるように,高校での試行予定もすでに決まっていることから,本研究課題の達成に向けて,一定程度の見通しがついている。
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Strategy for Future Research Activity |
科学技術の社会的課題の解決に向け,対話・協働に基づいて「共創」する授業を支援するための教材開発をすすめるために,本研究課題の最終年度となる2019年度は、以下の方策を立てて遂行する。 (1)作成した教材の試行:2018年度に開発した2つの教材を中学校や高等学校の授業等で試行し,教師や生徒から得た意見・感想等をもとに検討を重ね,多くの教師が活用できるような実用的で汎用性の高い教材の作成をめざす。 (2)新たな教材の作成:これまでに開発した生命倫理(生殖補助医療)・遺伝子組換え食品を題材とする教材の他に,新たな題材での教材作成に向け,科学技術の社会的課題を扱う授業の中学高校での実施状況や理科教師の意識を調査し、中学高校の理科の教育内容をふまえた題材を選定して,教材開発に着手する。 (3)学会等における発表:本研究課題で得た知見や成果を、学会・研究会等での研究報告やシンポジウム等の機会において発表し、プログラム設計・分量・教材の提供形態等について広く批評を頂くことで,教材の精度を高めるよう改良を重ねる。 (4)作成した教材のWeb・書籍等による公開:これまで進めてきた研究成果をひろく社会に公表するために、学会誌や書籍等における研究成果の発表,Web上での公開,書籍による公開等を検討し広く社会に還元する。 以上のことから,新しい科学技術の社会における利用について生徒の意思決定・合意形成を支援し、科学技術の社会的課題の解決に向けて対話・協働に基づいて「共創」する授業を支援する教材開発,普及啓発をすすめる。
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Causes of Carryover |
作成した教材の印刷・製本費用が,見積もり時よりも安価で作成することができたため次年度使用額が生じた。繰り越した分は新たな教材作成費用に還元する。
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Research Products
(5 results)