2018 Fiscal Year Research-status Report
中国における歴史的事例の学習を基盤とした道徳教育実践に関する研究
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18K13180
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
原口 友輝 中京大学, 国際教養学部, 准教授 (70630995)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Facing History / ワークショップ / 道徳教育 / 歴史的事実 / 考える道徳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国を拠点とするNGOである「歴史と私たち自身に向き合う」(FHAO)の手法が、中国においてどのように取り入れられているのかを明らかにし、それによりわが国の文脈で、どのような歴史的事実をどう教えることが、考え判断する道徳につながるのかを考察するものである。 2018年度ではまず、FHAOの近年の展開の特徴を明らかにするために、FHAOについての文献収集・分析を行った。またニューヨークにおけるワークショップへの参加、FHAOが顕密な関係を築いているパートナー・スクール・ネットワーク(ニューヨーク地区)のミーティングへの参加、FHAOの資料と方法論を使用している授業実践の見学、スタッフへのインタビュー調査などを行った。これらの知見は次年度に学会発表等で公表していく。 また、次年度以降中国でのFHAOの展開を調査するための足掛かりを作るために、FHAOが中国に関して作成した資料集ができた経緯についてもインタビューを行った。基本的には、南京事件や文化大革命の資料が作成されたのは、米国の文脈で中国系移民を対象に教えるためであったとのことである。それらの資料集が今度は中国国内で用いられるようになるのは興味深い。あわせて、資料集の内容を分析するために、特に南京事件についての研究を中心に文献の収集を行った。 なお、本年度中に中国国内でのワークショップに参加し、その特徴を明らかにする予定であったが、開催が2019年4月となったため年度内には参加がかなわなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FHAOの新しい展開についてはおおむね追求することができている。しかし、FHAOの中国での活動の調査については遅れが生じている。その理由は次の二点による。 第一に、FHAOは以前は中国本土でのワークショップを開催していた。しかし2017年度から次第に方針を変更し、中国での活動を当面は香港で行うことに限定した。そのため、中国本土での授業実践を調査するためには、香港に来た中国本土の教員との関係を形成するという、やや遠回りな手順が必要となった。 第二に、香港でのワークショップは前回(2017年度)は12月に開催され、2018年度も1月に予定されていた。しかし諸事情から4月開催に変更された。このため、香港でのワークショップの開催の後に進めようと考えていた中国国内での調査に関しては、予定がずれることとなった。 ただし4月に開催されたワークショップにはすでに参加済みである。また、現在でも香港のワークショップに参加した中国本土の教員と連絡を取り合っている。したがって、これらの点で今後大きな遅れは生じないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は特にFHAOの開催するワークショップに注目する。その後に重点を授業実践に移していきたい。ワークショップに参加することは、次の三つの利点がある。第一に、ワークショップ内でFHAOのスタッフの発言に注目することで、FHAOがどのような点を強調しているかがわかる。近年のFHAOの特徴を知ることができる。第二に、参加者である教員がどのような知見を得るかがわかる。グループ内の議論など、単にワークショップ全体を見学者の立場で見学するよりも、調査者が実際に参加者とともに活動したほうがわかりやすい。第三に、ワークショップがどのように行われているか、そこで教員は何を学んでいるのかを明らかにしておけば、授業実践を調査する際の視点とすることができる。FHAOの手法がどう取り入れられたのかを明らかにしやすくなる。 したがって、引き続きニューヨーク等と香港のワークショップに参加する。また可能な範囲で授業実践を見学する。それにより米国等と中国での実践の相違が明らかになる。また、香港でのワークショップに参加する際、より多くの中国本土からの参加者と関係を築き、授業を直接訪問するための準備をする。 なお、香港でのワークショップに参加し、スタッフへのインタビューをした結果、次の二点に注意して進める必要があることが明らかになった。第一に、香港の学校と中国本土の学校との教育状況は大きく異なる。したがって、両者に渡って研究を進めていく必要がある。第二に、参加者は今までのところ歴史か言語の教員がほとんどであった。したがって、かれらの実践を分析する際には道徳教育の視点から分析する必要がある。と同時に、かれらの学校でどのような道徳授業が行われているのか、そのような実践とFHAO実践の導入が関係しているか(していないのか)についても注目する必要がある。
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Causes of Carryover |
香港でのワークショップ開催予定が2019年1月であったが、4月に変更された。その分が次年度にまわった。ただしワークショップは実際に開催され、差額分はすでにほぼ使用している。
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