2021 Fiscal Year Research-status Report
中国における歴史的事例の学習を基盤とした道徳教育実践に関する研究
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18K13180
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
原口 友輝 中京大学, 教養教育研究院, 准教授 (70630995)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Facing History / 道徳教育 / 社会科教育 / 困難な歴史 / 考える道徳 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国を拠点とするNGOである「歴史と私たち自身に向き合う」(FHAO)の手法が、中国でどのように取り入れられているのかを明らかにすることで、我が国の文脈においてどのような歴史的事実をどう教えることが考え判断する道徳につながるのかを考察するものである。 本年度は、これまで入手した資料に基づき、研究成果を暫定的に論文にまとめた。すなわち、香港における二つのFHAOワークショップの分析(学会で一部発表済み)と、南京外国語学校での実践の検討(未発表)を行った。 南京外国語学校での実践の検討を通して、次の三点の意義が明らかになった。第一に、出来事の背景とそこでの個人の選択に焦点化することである。特に「南京大虐殺」の場合、犠牲者の総数や戦後補償など論争的な話題に焦点を当てると、政治的な議論に巻き込まれてしまう。教育実践においては、どのようなプロセスで、なぜ残虐行為が起こったのか、そこでの諸個人はどのように行動していたのかに焦点を当てることが有効と考えられる。第二に、生徒自身のこれからの選択に焦点を当てていくことである。南京外国語学校では、歴史的事実に学ぶだけでなく、今後の自分たちの選択についても考えさせていた。第三に、英語のコースでFHAOプログラムが実践されていたことである。南京外国語学校の実践は、英語教育でありながら歴史教育(社会科教育)でもあり、さらには生徒にこれからの選択を考えさせていくという点で、道徳教育であった。我が国においても、中学校段階における社会科と道徳科や、高等学校段階における地理歴史と公民だけでなく、外国語や国語との連携を通じた道徳教育を構想していくことが可能である。 一方で、南京外国語学校の実践については、実践の全体像や細部に関する資料が入手しきれていない。今後改めて入手していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響により渡航できず、中国での実践調査ができていない。オンラインでの調査に切り替えているが、実際の授業実践などのデータが入手できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
オンラインで資料をもらい受けつつ、オンラインでのインタビューなども行っていく予定である。直近では、FHAOコースを受けた高校生がルワンダ出身の留学生と交流し平和について考えていくオンライン・ワークショップに参加することが決まっている。FHAOコースの中身だけでなく、生徒たちがそれを受けて学習をどのように生かしているかについても注目していきたい。あわせて、FHAOの中国担当者に、中国の教員のニーズや実践状況を調査する予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度も訪中できなかったため、旅費と人件費などの研究費を大幅に次年度に回すことになった。2022年度も訪中が不可能な場合は、引き続きオンラインでの資料入手とインタビューを行う。特に複数の実践に関して、通訳を交えたインタビューを行っていく予定である。これらにおいて未使用の人件費(通訳代)・謝金なども使用予定である。
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