2022 Fiscal Year Research-status Report
中国における歴史的事例の学習を基盤とした道徳教育実践に関する研究
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18K13180
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
原口 友輝 中京大学, 教養教育研究院, 教授 (70630995)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 道徳教育 / 社会科教育 / 困難な歴史 / 考える道徳 / Facing History / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,これまで資料提供を受けていた南京外国語学校におけるFHAO選択コースの一環として行われたオンライン・ワークショップ「南京からルワンダへ: 歴史に思いを馳せ,未来を拓く」に参加した。これは,同校のFHAO選択コースの教師と生徒,南京大学の平和学の研究者と大学院生,中国ルワンダコミュニティ(RCA)の代表,河海大学のルワンダ人学生らが,ルワンダと南京における2つの大規模暴力の歴史を比較検討しつつ,「親や教師,友達と対立した場合どうすると良いか」など,身近なところから平和な世界を築くために何ができるかについて意見交流をするものであった。FHAO選択コースを受講した生徒たちがそこでの学びを今後の平和構築にどう応用しているのかをうかがえる貴重な機会であった。 このようなワークショップの意義として次の3点があげられる。第一に,生徒にとっては,FHAO選択コース内で行われてきたホロコーストと自分たちの身近な大規模暴力とについての学びを,さらにルワンダでの大虐殺の文脈に広げている点である。すなわち本ワークショップによって,これまでの学びの集大成として,個々の負の歴史の個別的な理解とそれぞれに共通する普遍的な教訓とに関する知見を,さらなる歴史の文脈に当てはめて理解できるという構造になっている。第二に,本ワークショップでは平和の探求について,上述の問いのように生徒の身近な生活のレベルでの考察を互いに行っている点である。歴史を自分事としてとらえる方法として,我が国の道徳教育にも応用可能である。第三に,異なった立場の人々(中国・ルワンダの,生徒・学生・教師・研究者等)が平和構築について共に考える構造となっていた点である。オンライン上とはいえ,国・立場の異なった人々の交流は,それ自体が相互理解と平和の構築につながる意義を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまでのコロナ政策による制限に加え,中国において2022年の年末から年始にかけて発生した爆発的なコロナ感染拡大により渡航できず,4月末までの時点で中国での実践調査ができていない。 一方で,南京外国語学校におけるFHAO選択コースの一環として行われたオンライン・ワークショップ「南京からルワンダへ: 歴史に思いを馳せ,未来を拓く」に参加することができ,生徒たちがFHAOのコースから何を学んだのか,そして学んだ内容をルワンダの大虐殺などほかの困難な歴史と結び付けて考えることによって,それらを今後の世界平和の構築のためにどのように活かそうと考えているのかについて,知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年3月末から中国への渡航制限が大幅に緩和されたことを受け,今後は9月に南京外国語学校と香港での実践を調査する予定である。これらをこれまでの研究成果とあわせて本年度中に公表する予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度も訪中ができなかったが,2023年度は訪中がかないそうであるため,旅費と人件費などの研究費の残額を2023年度に回し,オンラインよりも対面での実践調査を行うことにした。あわせてFHAOの中国担当者と連絡を取り,香港での教育実践について調査を行う準備をしている。これらにおいて未使用の旅費・人件費(通訳代)なども使用予定である。
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