2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K13186
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Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
須藤 絢 函館工業高等専門学校, 一般系, 准教授 (90780693)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メタファー / 正負の数 / 数学教育協力 / 数直線 / アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
数学的概念の中には、実際の事象や経験を例えに用いること、言い換えるとメタファーが必要不可欠な単元がある。しかしながら、数学学力の向上が喫緊の課題となっているアフリカ諸国において、メタファーを軸とした研究はなされてこなかった。このような中、研究代表者はメタファーを必要とする抽象的概念である正負の数と加減を取り上げ、アフリカ諸国の低い数学学力の一端にメタファーが機能していないという仮説のもと調査を実施してきた。その過程において、数を直線上の点とみなすメタファーが計算技能に大きな影響を与えていることが分かってきた。そこで、数直線の捉え方についての先行研究を概観したところ、発達心理学分野では、「数直線課題」として数直線上の数の見積もりは発達段階に応じて変化していくことが研究されていることが分かった。数直線課題は、左端に0、右側に100などが書かれた数直線上において、提示した数の位置と見積もりとの差異を計算式により具体的な数に落とし込むことができ、数直線課題によって、数と量の理解を形成する心的数直線の形成過程が捉えることが出来ると言われている。そこで、これまでのメタファーという視点に加え、数直線課題を援用し、より詳細に生徒の概念理解の様相を明らかにする調査紙の作成を行った。また、はこだて未来大学藤野教授との共同研究により、時間的制約の大きいアフリカ諸国での調査負担を減らすため、数直線課題をipad上ででき、自動的に計算式の値を出すことのできるICT環境を整えることが出来た。他方で、新型コロナウィルスの影響で現地調査が出来なくなったことを受け、宮崎国際大学渡邊教授との共同研究により、これまで現地調査で得てきたデータを統計的に2次分析を行い、正負の数の加減の誤答や正答パターンにはある種の法則があることが明らかになると同時に、ザンビアとマラウイの持つ回答パターンの差異なども明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響により現地調査が出来ず、当該年度の進捗状況は遅れている。本来の予定であれば、昨年度3月に正負の数の計算技能と心的数直線の発達段階との関連を紙媒体での調査を実施、当該年度9月にはより多くのデータが取得可能となるICTを活用した現地調査の実施およびICT活用の効果の検証を行う予定であった。また、これら調査の結果を受け、心的数直線の発達を促すことが出来る実践授業およびその検証までを計画していた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画方針は新型コロナウィルスの影響により1.現地調査が行けない場合と、2.現地調査に行くことが出来る場合に大きく分かれる。 1.現地調査に行けない場合 現地調査に行けない場合、すでに着手している数直線課題をipadで行うことのできるICTを活用した調査ツールを改良し、心的数直線の発達を促すことが出来るICT機器の実装を中心に行っていく。現在、ipad上で提示されて数を数直線上で指すことによりその正確さを数値で返してくれるアプリの開発までがなされているが、この機能に加え、数直線の見積もりが正確であれば点数が入るなど、子どもが自分で遊び感覚で心的数直線の発達を遂げることが出来る機能の実装を行っていく。同時に、これまでの研究で明らかになってきている現実世界と数がリンクしていないという現状(メタファーが機能していない)への対策として、アフリカ諸国の現実世界(例えば机やいすなど)に数直線をマッピングし、現実世界に数や数直線を浮かび上がらすことが出来るAR(Augmented Reality)の実装を行ってき、現地調査が可能になった時点でこれらの効果検証を行う準備を行うと同時に、アプリなどは現地協力者へのダウンロードを促し、遠隔による効果検証を模索していく。また、これまで行ってきた調査結果に対し、すでに着手している統計的な2次分析を継続的に行っていき、正負の数の加減の正答・誤答パターン、国による差異などを中心とした論文発表を行っていく。 2.現地調査に行くことが出来る場合 現地調査に行くことが出来る場合には、当該年度に予定していた心的数直線と計算技能の関係を明らかにする調査およびICTを活用した調査の有用性を明らかにしていく。同時に、ARを使用した心的数直線発達支援の予備調査を行っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により現地調査が出来なくなったため、現地調査に使用予定であった旅費が計上されなかった。また、学会がオンライン開催になったため、旅費が計上できなかった。
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Research Products
(3 results)