2019 Fiscal Year Research-status Report
中華圏両岸四地の官立大学の資金の調達・運用と高等教育政策の関係についての比較研究
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18K13202
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
黄 文哲 三重大学, 地域人材教育開発機構, 講師 (50768182)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高等教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2つの視点から研究課題を進めた。一点目として、大学の情報公開に関する政策推進の経緯、実際の取組み、情報活用の現状、日台の比較等の観点から大学の情報公開の課題をまとめた。台湾の公的情報公開の義務付けは、2005年の「政府情報公開法」にて定められた。これにより、大学の情報公開は、各法令の改正・公表と共に徐々に進められた。教育研究成果をより広く公開し、生徒や保護者の大学選びをより支援すべきという政府の動きが起こり、政府主導で大学の情報公開を進めさせている。「大専校院校務資訊公開サイト」や教育成果のデータベース化と積極的な公開によって、社会全体、とりわけ受験生およびその保護者への説明責任を果たすことが、教育省が考える台湾の大学の役割の一つでもあり、また、台湾では大学が国公私を問わずほぼ公的資金を受けているため、教育研究活動の情報公開は、社会に対して負っている責務であり、十分に果たすことによってはじめて担保されるものであるとされている。また、情報公開をすすめさせるもう一つ重要な目的は、やはり大学間の競争を促すことである。二点目としては、大学の資金調達における寄付金の獲得に着目し、台湾、香港、マカオ3地域の大学の実態を明らかにした。特に、3地域の官立大学の収入構造を確認し,大学の資金調達に関わる寄付推進策の経緯,実際の取組みの事例比較を通じて,3地域の大学の寄付事情について明らかにした。その結果、香港とマカオでは企業からの寄付が多く、台湾では卒業生からの寄付が多いことが分かった。さらに台湾では,寄付する理由として、「資金運用の適切性」、「寄付金の使い道の明示」などが挙げられ,寄付したくない理由として、「資金運用の不透明性」が挙げられた。寄付金獲得を展開するためには,「各地域の特徴を踏まえた寄付金獲得活動を行う」、「資金運用について詳細に公開をする」ことが必要であると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度に予定していた研究活動のうち、研究対象地域の高等教育機関の情報公開に関する現状と課題をまとめた結果を日本教育社会学会大会で発表した。さらに、3地域の代表的な官立大学の財務諸表を整理し、寄付金収入の獲得に着目し、3地域の寄付文化、寄付金収入の成果、寄付金の獲得策を比較し、三重大学高等教育研究第26号にて投稿した、 また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、中国、香港、マカオへの現地調査が大幅に遅れ、一部の現地限定公開の資料を手に入れることが難しくなっている。そのため、中国を中心とした研究課題の進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型肺炎の影響によって今年度の研究計画の実施がやや遅れたが研究計画の大きな変更はなく、予定に従って研究を進めていく所存である。さらに、中国、マカオ、香港の3地域に赴き、フィールドワークを行う予定である。また、科研研究の成果については、学術雑誌等に研究成果をまとめた調査報告、論文を執筆し、発信する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型肺炎の影響で現地大学との調整が取れず、中国、マカオ、香港での研究資料収集の実施が不可能であったためである。 それゆえ、来年度(令和2年)には中国での研究資料収集を行うと同時に、マカオ、香港での研究資料収集と現地調査を行う予定である。そのための費用として、計上している。
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