2019 Fiscal Year Research-status Report
米国学生支援におけるプログラムの基準とその評価に関する研究
Project/Area Number |
18K13204
|
Research Institution | National Institution for Academic Degrees and Quality Enhancement of Higher Education |
Principal Investigator |
蝶 慎一 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構, 研究開発部, 助教 (50781548)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 学生支援 / 米国 / 質保証 / 評価基準 / プログラム / スタンダード / 専門職団体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国の学生支援における「全米基準」に焦点を当てることで、どのような基準の内容が扱われ、特徴は何であるのかを制度面から明らかにすることを基本的な目的としてきた。具体的に、2つの課題設定を行い、①「『活動プログラム』をめぐる『全米基準』の調査・内容分析」と、②「『修士プログラム』における『全米基準』の調査・内容分析」である。その上で、米国の学生支援の評価のあり方・要素を実証的に析出・整理・考察することを構想している。 以下、特に当該年度は、①の「活動プログラム」を中心に本研究を進捗させてきた。具体的な研究実績として大きく2点ある。第1に、これまでも注目してきた学寮の専門職団体である「ACUHO-I」という団体の「全米基準」について、既に本研究期間(2019年2月下旬頃)に実施した米国ボーリンググリーン州立大学のアーカイブ(全米学生支援アーカイブ)で新たに発掘してきた報告書等の分析を進め、大学教育における学寮の位置づけを検討し、その中間的報告を関連学会で発表した。第2に、上記とも関連するが、学生支援の各取組に大きな影響を及ぼす「全米基準」の対象エリアを米国以外にカナダ等の北米に広げて分析に加える試みを行った。なお、②の「修士プログラム」については、文献収集や先行研究の検討を開始し、該当する大学関連団体のインターネット検索サイトによるウェブ調査を実施中であり、最終年度につなげていく見通しである。 こうした本研究実績の一部については、当該年度中に全国学会(日本高等教育学会、大学教育学会、高等教育質保証学会、大学行政管理学会)等で、大会シンポジウムの企画運営・実施、口頭発表をはじめ、若手研究者として招待講演を受けることもできた。さらに、査読付き学術論文誌にも当該年度までに掲載、刊行することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況については、本研究における2つの課題設定である、①「『活動プログラム』をめぐる『全米基準』の調査・内容分析」、②「『修士プログラム』における『全米基準』の調査・内容分析」について、当該年度までに基本的な文献収集、所属機関等の電子ジャーナル等を活用しながら国内外の先行研究の包括的調査を終えることができた。また、既に本研究期間で行ってきた米国のボーリンググリーン州立大学のアーカイブ(全米学生支援アーカイブ)で実際に発掘・収集してきた各種報告書やスタンダード(基準)類の書類とそれらの複写画像等を順次整理、分析できている。当該年度中(2020年3月上中旬)に再度、同アーカイブで資料調査を実施するとともに、その関連情報を具体的に入手するために担当の専門アーキビストに聞き取りする予定であったが、当該渡米の調査・出張が中止となったため引き続き、メール等で情報交換を行い、最終年度の調査分析に結実させていく予定である。 当該年度の研究成果の一部は、全国学会等での口頭発表、学術論文への投稿とその刊行を行うことができた。まず、全国学会等での口頭発表では、大学教育学会第41回大会(2019年6月1日)で「大学教育における学寮の位置づけと「学修」の概念的検討-国際学寮担当職協会(ACUHO-I)の議論を手がかりに-」、大学行政管理学会第23回定期総会・研究集会(2019年9月8日)で「大学における学生寮の「目的」と「担い手」ー1970年代の資料に基づいてー」、として発表を行った。また、高等教育質保証学会(2019年8月24日)では、学会関連シンポジウムにおいて本研究代表者がシンポジスト司会の一人として「学生支援の評価を再考するー戦後初期の歴史からのアプローチー」と題し発表、議論に参画した。続いて、学術論文への投稿とその刊行では、当該年度末までに査読論文2本を発表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度に向けて、当初の本研究計画に沿って調査研究を進めていく。本研究の2つの研究課題のうち、特に、②「『修士プログラム』における『全米基準』の調査・内容分析」の課題に焦点を当てて取り組む予定である。 すでに今年度の後半期に文献収集(NASPA、ACPA、ACUHO-I、諸外国の学術雑誌等、ハンドブック類)や該当する大学関連団体のインターネット検索サイトによるウェブ調査を実施中であり、米国の学生支援における専門職人材及びその職能養成を展開している大学院修士課程のプログラムの候補を抽出できている。加えて、関連する博士課程プログラム(学生支援に関わるPh.D.、Ed.D)の動向もあわせて予備的に検討している(多少の差はあるが、現在約50~80プログラム程度が存在、2020年春時点)。こうした候補のプログラムの実態をまずはウェブ等に掲載されている膨大な情報源より、プログラムの目的・理念・種々のポリシー、カリキュラム構成、コア科目・選択科目の内容、入学試験科目(英語あるいは第2外国語が必須か否か)や修了(修士論文が必要か否か)に関する諸要件、それらを大きくサポートする学生支援の具体的取組を整理・検討することを試みる。また可能であれば、オンラインでの修士課程、博士課程プログラムの増減や質保証の動向も補足して情報収集する予定である。 本研究で得られた研究成果や知見は、全国学会での口頭発表、招待発表、各種報告書や今年度も行った投稿論文等で広く公表することを目指している。わが国の大学教育における学生支援、学習支援の先進性を海外(特に、北米地域)に発信できるように英語での成果発表の実施に向けても適宜準備していく予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、主に、当該年度中(2020年3月上中旬)に実施を計画・予定をしていた米国・ボーリンググリーン州立大学等への渡米訪問調査が新型コロナウイルスによる不要不急の研究出張が中止(次年度に延期予定)となったことが考えられる。 あわせて、米国等の学生支援の評価に関する文献、各種ハンドブック・ガイドブックの購入価格の変動や調整によることも考えられる。翌年度分として請求する助成金とあわせて、上記の関連文献・資料を含む物品の購入費や次回以降に実施予定の研究出張旅費で調整し、使用する計画である。
|
Remarks |
米国の学生支援における教育活動、プログラムの最新の動向とその評価に向けた方向性を各種のニュース記事や関連団体等による調査報告をもとに整理している。
|
Research Products
(8 results)