2018 Fiscal Year Research-status Report
自発的な空間的視点取得に着眼したASD児の模倣の特性解明と指導法開発
Project/Area Number |
18K13208
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
朝岡 寛史 筑波大学, 人間系, 特任助教 (20808042)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 空間的視点取得 / 模倣 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症 (autism spectrum disorder; 以下, ASD) 児において、“逆さバイバイ (手のひらを自分の方に向けてバイバイと手を振る)”のように目に映ったままの他者の動作を模倣することが報告されている。それでは、なぜASD児は自己の視点からの見えに基づいて模倣する傾向がみられるのだろうか。本研究では他者が何を見ているかを推測する能力とされる「空間的視点取得」に着眼し、その特性を解明することと、指導法を開発することを目的とした。 平成30年度は、模倣特性の解明ならびに指導法開発の前提となる、ASD幼児児童における空間的視点取得の成立条件を検討した。少数事例研究計画法、定型発達児との群間比較法、ならびに眼球運動解析などの方法を用いて、知的障害のないASD 児童幼児は自発的に他視点からの見えを推測することに困難さがあるという仮説を検証した。その結果、いくつかの制限はあるものの仮説が実証され、空間的視点取得の成立を促進する条件の一端が明らかにされた。具体的には、ある対象物を実際に見ながら、他視点からの対象物の見えを判断する状況では、a) 他視点へ自己視点を移動する、またはb) 他視点を明示的に教示することが成立条件として示唆された。また、対象物を思い浮かべて (i.e., 対象物が撤去されて)、他視点からの対象物の見えを推測する状況では、c) 対象物を注視し続けながら他視点に移動する、かつd) 他視点からの見えの表象を保持することが条件として示された。そのうち、条件c) は眼球運動の解析によってその有効性が実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度では、模倣特性の解明ならびに指導法開発の前提となる、ASD幼児児童における空間的視点取得の成立条件を検討した。その結果、成立条件の一端が明らかにすることができた。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の成果をふまえ、第一に、ASD児と定型発達児に対して他者の動作を模倣させ、そのときの対象児の手の動作・形と視線パターン、他者の視点方向に頭や体を傾ける行動を分析する。第二に、他者の視点から他者の動作を観察することの効果を検討する。
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