2018 Fiscal Year Research-status Report
ASD児に対する仲間との協同を促進するためのスクリプトを用いた支援方法の開発
Project/Area Number |
18K13216
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
吉井 勘人 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (30736377)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症児 / 協同 / 発達支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
二人以上の人が一緒に物事を行う協同は、人が社会生活を営む上で必要不可欠な能力である。自閉スペクトラム症(ASD)の子どもとその仲間との協同活動の困難さに対して、本研究では、仲間との協同を促進するためのスクリプトを用いた発達支援プログラムを作成し、その実施を通して、①支援目標の達成の程度について、②直接支援をしていない、仲間との社会的関わりに与える影響について検討することを目的とした。まず、ASD児の実態に即した適切な支援を実施するために、協同の発達に関する先行研究を概観して、仲間との協同の発達支援プログラムを作成した。次に、特別支援学校の小学部に在籍するASD児2名を対象として、仲間との協同を促進するための支援を実施した。具体的には、他児の働きかけに応答するといった仲間との短い相互作用は成立するものの、仲間との間で目標とプランを共有して相互作用することの難しい子ども同士に「クレープづくり」スクリプトを用いて支援を行った。「クレープづくり」スクリプトは、計画・実行・確認の3つの場面で構成し、「役割を決める際に子ども同士でプランを話し合う」、「相互支援や相互確認を行いながら役割を遂行する」を支援目標として授業を実施した。その結果、子ども同士の協同的な関わりを促すために、他児への注意喚起やモデル提示などの援助を行うことにより、子ども同士で道具を交互に交代しながら活動したり、他児の意図を確認してから行動したり、行為の結果について相互に確認したりするといった協同活動が生起するようになった。また、日常生活場面では、掃除の係を自主的に役割分担する姿がみられるようになった。以上より、スクリプトを用いた支援を契機として、ASD児が仲間とプランについて話し合って協同で活動できるようになること、加えて、日常生活での仲間との協同活動が促進されることが考察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、平成30年度には【研究1】のASD児の実態に即した適切な支援を実施するために、発達研究の知見を基にした仲間との協同の発達支援プログラムを概ね構成することができた。加えて、令和1年度(平成31年度)に実施予定していた【研究3】のASD児に対する仲間との「基礎的な協同活動」の促進支援とその効果検証を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究1】で作成した仲間との協同の発達支援プログラムに基づき、本年度は【研究2】のASD児に対する「仲間との相互的関わり」の促進支援とその効果検証を実施する予定である。また、研究成果については、本年度の日本特殊教育学会と日本発達心理学会にて、ポスター発表と自主シンポジウムでの話題提供として情報発信を予定している。
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Causes of Carryover |
平成30年度に記録のために使用する予定であった三脚が、観察対象とする対象児の状態との関係から使用しないため、未使用額が生じた。このため未使用額は本年度の記録のための三脚の経費にあてることとする。
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