2018 Fiscal Year Research-status Report
発達性ディスレクシアのオラリティに関する神経基盤の解明
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18K13218
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 孝平 京都大学, こころの未来研究センター, 特定研究員 (50713319)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発達性ディスレクシア / 非言語視覚情報処理 / 機能的磁気共鳴画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
「リテラシーの障害を生むディスレクシアの神経基盤は、非言語視覚情報処理の優位性を生む神経基盤と同一なのか」が、本研究の核心をなす「問い」である。本研究の目的は、この問いを、脳機能イメージングの手法を用いて、ディスレクシア児及び定型発達児の、視覚情報処理課題における脳活動、安静時の脳活動、脳形態を調査し、ディスレクシアの非言語視覚情報処理に関する神経基盤を包括的に解明することである。今年度は、その実験方法確立のため、ディスレクシアの非言語の視覚情報処理の特性についての先行研究の分析を行った。読字は、文字や単語の持つ視覚的な特徴を正確に解析することを求められるため、熟達した読み手は、文字や単語に集中して注意を向けるので、周囲への気づきを抑制した視覚情報処理をしている。例えば、リテラシー獲得は、周辺視野の情報処理を抑制し、中心視野の情報を分析的に処理する傾向に変化することなどが報告されている。これら先行研究から必要情報を収集して適切なfMRI課題を検討し、Impossible figure testを候補として選定した。さらに、これまでの私たちの研究結果から、読字処理に関係する領域間結合のもつ情報からディスレクシアかどうかを予測する方法が見出されているため、既存の安静時脳活動データを用いて、視覚情報処理に関連する脳領域間結合を検討するとともに、領域間結合解析を用いてディスレクシアか定型発達か否かを予測する方法の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本語話者の発達性ディスレクシアを対象とした脳機能イメージング研究は非常に少ない上、特に非言語の視覚認知特性に焦点を当てた研究は知る限りない。そのため、先行研究に準って実験手法を具体化することができにくい状況であった。したがって、関連する先行研究を収集し、fMRI実験に適した課題を検討するのに時間を要した。また、課題や安静時の脳活動を用いて、領域間結合解析を行うことでディスレクシアと定型発達の判別を行う方法についての調査にも時間を要した。この手法も先行研究が非常に少なく、実験計画の立案には多くの検討が必要である。このような新規分野における研究方法検討が、進捗をやや遅らせている要因と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Impossible figure testの行動実験を実施し、どのような条件下でディスレクシア群と定型発達群に有意差が生まれるか検討し、刺激提示方法等の課題の条件設定を具体化する。また安静時脳活動や白質繊維走行の撮像などMRIの撮像プロトコルについても適切な設定も検討し、実験の準備を整えていく。2019年度中には、実験協力者のリクルートを行い、fMRI実験を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
研究初年度にfMRI実験が開始できるよう予算配分の計画であったが、fMRI実験が2年次に移動せざるを得なかったため、次年度使用額が生じた。
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