2018 Fiscal Year Research-status Report
発達障がい児における学習・運動・神経基盤の変容過程解明による学習支援科学の構築
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18K13225
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
大森 幹真 昭和女子大学, 人間社会学部, 助教 (50779981)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 学習支援 / 学習支援科学 / 発達障がい / 読み書き |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では定型発達児と発達障がい児を対象に,学習段階を連続的に捉えた移行促進的学習支援を行い,読み書き学習の獲得・段階の移行過程に付随した「読む」「書く」「見る」行動の変容を解明し,学習支援科学という融合領域を構築することを目的とした。2018年度の研究実施状況は以下の4点であった。 ①書字中における視線パターンと行動特性の同定:大学生20名を視覚運動協応得点により2群化し,アイトラッカーを用いて両群の書字中の視線パターンの様子を検討した。その結果,高群の方が,視線逸脱回数が少なく,視写中の視線逸脱回数の多さが,児童・生徒の書き困難の早期発見につながる可能性を示した(大森, 2019)。②文章の読み理解向上に付随した視線パターンの変容:発達障がい児15名と定型発達児13名を対象に,2種類の繰り返し読み訓練を用いて文章の読み理解支援を行い,訓練前後の視線パターンを計測した。その結果,通常の繰り返し読み支援では発達障がい児15名の文章理解が促進されにくく,定型発達児13名とも異なった視線パターンの変容が見られたことを報告し,現在その成果を国際誌に投稿中である。③時系列的な刺激提示による読み書きの獲得:以前開発した刺激の空間的な位置関係を保持したまま,時系列的な刺激提示を行うことにより,1名の学習障がい児が単語の読み書きを獲得し,未訓練の単語学習へと般化が見られたことを明らかにし,第36回日本行動分析学会においてポスター発表を行った。現在は同条件と他の条件と学習効果を比較・検討中である。④結果の伝播と展開:第30回日本発達心理学会において,文字読みから文章理解までの連続的な支援を行うための自主シンポジウムを開催した。また,計測自動制御学会より論文の執筆依頼を受け,読みと視線パターンの関連を示した論文を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会発表を2件行い,日本語論文を2本執筆(うち1本掲載済み)し,英語論文も1本執筆し,査読後の修正中であるため。 大学生を対象にした書字中の視線パターンの計測において,書字困難と視線逸脱回数の多さから,行動レベルにおいて首の上下動の多さが潜在的な書き困難児を同定できる可能性を示し,その成果が論文に掲載された。また,成人のデータを基に,子どものデータを取得中である。文章理解における視線パターンの変容を示した英語論文においても,多くの指摘は序論の明確化を求めるものであり,手続きや結果,着想についての評価は高く,現在再投稿に向けて指摘について修正中である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進方策としては,前年から引き続き,読み書き困難評価研究と移行促進型学習支援研究を継続して実施する。特にウェイトリスト群に対しても支援を開始し,学習獲得と移行過程の「見る」行動の変容を解明することを試みる。2018年度に携行型視線追跡実験システムが完成したため,研究室内に留まらず,近郊の共同研究施設にも出向し,データを取得予定である。 研究を遂行する上での問題点は,視線追跡装置(Tobii)を用いての測定の際に,文字刺激の読み書きを行うため,疲れや嫌悪感を示す場合がある可能性がある。その際には課題間に適宜休憩を挟み,課題を実施する。1つの課題は研究協力者の読み書き速度にもよるが,8分以内には終了するように課題構成をしている。また,標準化検査の実施が想定よりも長くなってしまう可能性がある。その際にも実施を焦らず,15分を目安に休憩を挟みながら,検査を実施する。研究協力者と保護者の希望がある場合は,課題や検査ともに途中で中断し,再度ご来所頂いたうえで研究を再開できる旨を事前に伝える。
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Causes of Carryover |
アイトラッカー用のソフトウェアの制御専用のコンピュータ購入のために,前倒し支払請求として30万円を求めた。しかし,請求時の見積もりよりも安価で購入できたため,前倒し支払い請求にて使用した残額を次年度に繰り越す。また,次年度使用額として計上した経費は,現在執筆中の英語論文の校閲費や投稿費として使用することとする。
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