2019 Fiscal Year Research-status Report
乳児期から幼児期へ接続期の発達における数量認知移行プロセスの検討
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18K13228
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
山口 真希 花園大学, 社会福祉学部, 講師 (20637623)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乳幼児期の数量認知能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、乳幼児期の発達段階にある定型発達児および知的障害のある子どもを対象とした実験と聞き取り調査によって、乳児期から幼児期の接続期における数量認知能力の移行過程について検討している。研究は3段階構成で進めており、前年度は、第1実験として、幼稚園の年少クラスに在籍をする3歳~4歳の定型発達児30名を対象に調査を実施した。当該年度は、前年度に実施をした実験データを分析し、日本発達心理学会の学会発表にて研究成果を公表した。 数4は子どもにとってサビタイジング(即時把握)できるかできないかの境界である。第1実験の結果、幼児期初期の子どもの数認識において4の理解には質的な変化が伴うことが明らかになった。まず、数4の理解はその次の数5の理解よりも困難を生じることである。事例分析により、数4の理解の難しさは、「4」の呼び名が複数ある日本語の難しさにも関連していることが確認された。次に、数4の理解がある子どもとない子どもの間には、集合数を扱う際の方略に違いがあることが見出された。数4の理解がない子どもが、モノを一つずつしか扱わないのに対して、数4の理解がある子どもは2つ3つをまとめて扱う方略が見られた。数4を数えることができ、モノがたくさんある集合から数4だけを取り出して数4の集合を構成することができる子ども(数4の理解がある者:4-knowers)の数量感覚は、そうでない子どもと比べて違いがあるという結論が得られた。 さらに、当該年度は、第2実験の計画をたて、幼稚園の未就学児クラスに在籍をする2~3歳の定型発達児20名を対象に調査を実施した。①第1実験で見出された傾向をさらに幼い年齢で確認することと②4の理解が2や3の理解とどのような関連性があるのかを明らかにすることを主な目的として調査を進めた。現在は第2実験で得られたデータを分析し研究をまとめているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、これまで乖離的に進められてきた乳児期の研究と幼児期以降の研究をつなぐことで、生得的な数量認知処理過程から後天的な数量認知学習過程の連続性を明らかにすることである。 前年度は、3~4歳というシンボル機能が発達し始める年齢の子どもを対象に第1実験を行った。数詞を知り、数唱ができ、数えることが上手になっていく時期である。この時期はすでに、数の表象ができている子どもが多く、見えなくなったモノの個数を把握する課題と他の課題についての関連性は見受けられなかった。 そこで本年度は、同じ実験パラダイムを用いて、年齢を一つ引き下げた2~3歳の子どもを対象に第2実験を実施した。この時期は、ちょうど数詞に出会い、数えること目にする機会(後天的な学習機会)が増える頃である。なかにはことばの出にくい子どももおり、数の表象を持っていないと見える子どもも多かった。ノンバーバルな課題に子どもたちの考えがよく表現されていたため、現在は、第2実験のデータを整理し、子どもの反応を丁寧に分析しているところである。 該当年度内すでに3年次の調査計画を具体化しており、第2実験の成果発表(学会発表)の見通しも立っている。また、論文の執筆を進めている。よって、ここまでは順調に研究が進められていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で述べたように、現在は、第2実験のデータ分析と論文の執筆を進めているところである。第2実験から見出された結果については、まとまり次第、関連学会にて発表する予定である。申請時点の予定では、三年次に乳児を育てている保護者を対象にしたインタビュー調査を計画している。予定通り、シンボル形成が進み始める年齢の子ども(2歳以降)を養育している保護者に協力を依頼しているところである。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、インタビューの実施時期が遅れる可能性はあるが、できるだけ早期に調査を進めたいと考えている。 また、最終年度であるために、これまでの研究を総合的にまとめて発信していくことも同時に進めていきたい。
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Causes of Carryover |
年度末にかけて学会や研究会参加を予定していたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止・オンライン開催になった。また、調査を実施する幼稚園が近隣で確保できたため、当初の予定より交通費の縮減になった。その他、当該年度に旅費や人件費などを要さなかったため、次年度に繰り越す差額が生じた。当初の予定よりも次年度の研究成果を公表する機会を増やし、旅費として使用したいと考えている。
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