2018 Fiscal Year Research-status Report
自閉症児の関係障碍の形成要因検証:情動刺激への認知的バイアスの観点から
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18K13231
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
榊原 久直 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 講師 (90756462)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メンタライゼーション / 自閉症 / 支援者支援 / 関係発達 / 関係障碍 / 認知的バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症児とその身近な他者との関係性の中に生じる“関係障碍”の形成要因についての検証を行うことが本研究全体の一貫したテーマである。中でも,子どもの“心的状況の読みとり”をする能力に着目し,どのような関係性やその歴史,認知的なバイアスが,身近な他者の持つこの能力に影響を与えるのかについて検討を行うことを予定している。 初年度は子どもの心的状況の読みとり能力に関して,①先行研究からの理論的知見の整理,②保育士の抱える障碍のある子どもに対する支援観の変容を測定する単一事例研究の実施と分析・発表,③支援者を目指す学生らの抱える障碍のある子どもに対する支援観の変容を測定する少数事例研究の実施・発表,を中心に行った。 ①においては,“メンタライゼーション”の概念から心的状況の読みとりに関する理論的整理を行い,研究知見の中では心的状況の読みとりは個人に帰属する能力として扱われる場合がある一方で,臨床実践の知見としては個人に帰属する能力ではなく関係依存的なものであり,一者心理学的にではなく二者心理学的に捉える必要があることが明らかとなった。また②においては,“障碍”という支援者側の認知が,時に「特別な」支援をしなければならないという考えに過度に繋がってしまうことや,“保育士”という立場ゆえに家族と連携する形ではなく,家族の代わりに自分が支援を提供しなければならないという考えに囚われることが生じ,それが関係障碍の形成に寄与するという過程が見て取れた。③に関しては,②と同様に“障碍”という認知の影響を受けつつも,関係発達を志向する現場での支援者体験学習の中で,より多面的な支援観への変容が生じていた。 これらの①~③の活動は,2年目に実施する,(1)大学生を対象とした“障碍という認知のバイアス”を測定する量的研究(2)保育士ら支援専門職らを対象とした認知バイアスの量的研究の基盤となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度実施予定の(1),(2)の一部は初年度から実施を予定していたが,倫理審査に要する時間や,研究協力機関を増やすための訪問や巡回などに長期の機関を要し,申請時に予定したスケジュールと比べるとやや進度は遅れている。 ただしその一方で,①,②,③の作業をより丁寧に実施することが出来たため,今後の研究の分析や検討に関する知見の整理を十分に行うことが出来たといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は大学生や支援者を対象に,障碍の認知バイアスの影響を調べる本調査へと進んで行くことを予定しているが,調査終了時にはバイアスに関するでブリーフィングを行い,調査協力者らの抱える認知バイアス(障碍への偏見)に対して,心理教育を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
申請者が参加・発表する主たる学会の1つが昨年度は3月中旬に開催され,会計処理上,宿泊費や交通費,参加費の処理が次年度に持ち越されたため。
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