2019 Fiscal Year Research-status Report
自閉症児の関係障碍の形成要因検証:情動刺激への認知的バイアスの観点から
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18K13231
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
榊原 久直 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 講師 (90756462)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 関係発達 / 関係障碍 / メンタライゼーション / メンタライジング / スティグマ |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症児とその身近な他者との関係性の中に生じる“関係障碍”の形成要因についての検証を行うことが本研究全体の一貫したテーマである。中でも,子どもの“心的状況の読みとり”をする能力に着目し,どのような関係性やその歴史,認知的なバイアスが,身近な他者の持つこの能力に影響を与えるのかについて検討を行うことを予定している。 2年目の年度では,子どもの心的状況の読みとり能力に関して,①大学生を対象とした“障碍という認知のバイアス”を測定する量的研究,②保育士ら支援専門職らを対象とした認知バイアスの量的研究,③隣接する他の子どもに関わる支援職らを対象とした認知バイアスの量的研究を中心に行った。 ただし②と③に関しては,コロナ禍の影響を直接的に受けるフィールドを対象とした調査であったことから,年度途中より調査の実施が不能となり,サンプル数には限りがある状態での,仮の分析がなされた状態にある。 ①においては,“障碍”という認知を介して評定した大学生たちは,9か月児の曖昧な情動表出かつ評定者間の揺らぎの大きい刺激映像に対して,より不快な情動として評定をする傾向が伺われた。②においては,“障碍”という認知を介して評定した保育者たちは,3か月児,9か月児の不快な情動表出場面において,その表出の不快さとその強度を対照群と比べてより弱く評定する傾向が伺われた。③においては,“障碍”という認知を介して評定した教師たちは,快・不快・曖昧情動を問わず,いくつかの場面において,子ども側の感情や意図の存在をやや強く評定する傾向が伺われた。 これらの①~③の活動は,3年目においても継続して調査を継続し,データのサンプル数を増やし,より詳細な要因間の関連性の検討を行うことを予定している。その上で,その成果を学会発表および学術誌への投稿などを通して,公開していくことを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響を受け,2019年度末頃に予定していた保育士や幼稚園教諭らを対象としていた実験調査の多くを中止せざるを得ず,データのサンプル数の確保に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の動向を見つつ,安全を確保しながら調査を再開していく予定であるが,保育現場という特性上,2020年度内の調査も難航することが予想される。 また,研究成果の発表予定であった国際学会も2020年度は開催を中止し,1年間の延期となったことも踏まえ,場合によっては1年間の延長申請を検討している。
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Causes of Carryover |
秋の大型台風による出張の中止や,コロナ禍の影響を受けた2月以降の多くの調査や出張の中止により,当初予定していた旅費や研究補助アルバイトへの人件費等の使用が出来なくなったため。
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