2019 Fiscal Year Research-status Report
音韻意識検査に基づく英語読み書き困難リスク児の検出および介入法開発
Project/Area Number |
18K13233
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
奥村 安寿子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 知的・発達障害研究部, 特別研究員 (60749860)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 英語 / 音韻意識 / 中学生 / 英語の読み書き / 小学生 / 発達性ディスレクシア |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究で作成した音韻意識検査The Phonological Awareness 2(PAT2)の短縮版を用い,複数の公立中学校で1年生から3年生,計631名のデータ収集を行った。集団調査の対象は,当初の計画で小学生としていたが,英語の読み書き能力との関連を確認する必要が生じたため,小学生に先立って中学生で調査を行うこととした。調査対象者には,PAT2の短縮版と基礎的なアルファベットおよび英単語の読み書き課題を,学級単位の集団形式で実施し,両者の成績について関連を検討した。調査は年度終盤に実施したため,詳細な解析は現在進行中であるが,アルファベットの段階から未定着を示す生徒は少なくなく,単語の読み書きに困難が示唆される生徒はより多く存在することが判明している。また,PAT2の成績に学年差があまり見られないことから,日本の標準的な英語指導は音韻意識の向上に必ずしも有効でない可能性が示唆されている。 上記に加え,小学6年生で日本語の発達性ディスレクシアの診断が確定している12名,および定型発達児5名を対象に,同課題(英単語の読み書きを除く)を実施した。その結果,ディスレクシアのある12名では,アルファベットの定着が定型発達児よりも遅いことに加え,PAT2の特定課題(置換:単語を2つ聞き,音素が置換された位置を回答する)が苦手な傾向が観察された。このことは,置換が英語読み書き困難児およびリスク児検出の有用な課題となる可能性を示唆しており,検査バッテリーの確立に寄与すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集団調査の対象を当初の計画の小学生から中学生に変更したものの,まとまった規模のデータを取得でき,研究を大きく進める基盤ができた。また,発達性ディスレクシアのある小学生のデータから,リスク児の検出に有用な検査バッテリーについての知見も得られたことから,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で収集した中学生のデータについて,音韻意識課題の成績と読み書き課題の成績の関連を詳細に検討し,小学6年生の結果と合わせて,英語読み書き困難リスク児を検出する検査バッテリーを作成する。それを用いて小学生(定型発達児・発達性ディスレクシア児)のデータ収集を進め,基準値ならびに介入の判断基準を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度の調査は全て公立校で実施し,謝金がほとんど生じなかったため,使用額が計画よりも抑えられた。集団調査は引き続き実施していく予定であるため,次年度使用額はそれに係る物品費,旅費,および謝金(必要な場合)として使用する。
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Research Products
(1 results)