2021 Fiscal Year Research-status Report
思考プロセスの個人差に応じた創造性教育プログラムの開発と検証
Project/Area Number |
18K13236
|
Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
山口 洋介 高知工科大学, 共通教育教室, 助教 (60769602)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 創造的思考 / 創造性教育 / 創造的思考観 / アイデア生成 / デザイン思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、創造的思考力を向上させるための教育的介入手法の開発に向けて、思考プロセス等の個人差に応じたトレーニングのあり方について提案する手引書の作成を進めた。内容をより充実させるとともに、できるだけ多様なパターンを組み込むために、書籍や論文、記事等のさらなる渉猟を行い、情報収集および知見の体系化に取り組んだ。具体的には、次のような観点から分析を進めた。1)創造的思考のプロセスに関する認知的・神経科学的な知見の収集、2)創造的思考を妨げる態度的側面に関する知見の収集、3)創造的なアイデアを含む成果、および、それが生み出されるに至ったプロセスに関する事例の収集、4)創造的思考力に対する教育的介入手法の収集と効果に関する分析。また、創造的思考力に対してボトルネックのように作用している可能性のある要因として、道徳性に着目し、その関連性について検討を行った。近年の心理学的研究において、創造的な態度の活性化が非道徳的な行動を誘発し、反対に、非道徳的な行動への関与が創造的なパフォーマンスの向上につながるという知見が蓄積されつつある。道徳教育もまた、学校教育において重要な位置づけを占めており、もし、道徳性と創造性が相剋する関係にあるものだとすれば、双方の教育の間で葛藤が生じることになる。特に、創造的思考力育成の観点から言えば、道徳性を高く有している者に対して、例えば既存の枠組みからの脱却を図ることの重要性等を説いたとしても、その意味や価値を十分に理解してもらえないといった事態が生じている恐れがあると懸念される。そこで、実証的な研究の実施や、先行研究のレビューを通して、道徳性と創造性の関係について理解を深めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
創造的思考に関する認知的プロセスやトレーニング手法について理解を深め、介入のあり方に関する手引書の作成を進めている。また、道徳性との関係性について理論的な整理を行うことで、基本的には双方の教育が両立しうるものであることを示すなど、一定の成果が得られている。一方で、本務校の異動、および、Covid-19による影響のために、データの収集計画に支障が生じた。そのため当初の研究期間から延長を行い、研究を進める予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
教育的介入のあり方をまとめた手引書の作成を進めるとともに、さまざまな実験参加者を対象とした試行を通して、個に応じた介入手法の洗練化を図る。Covid-19の影響により、対面での実験の実施にはひきつづき制約が生じているが、オンライン・ツールを併用し、個別もしくは小規模集団でのデータ収集を実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
当年度半ばに本務校の異動があったとともに、2022年度からはさらに別の機関へと異動することになった。異動に際して、諸手続きや研究環境の整備に時間を要したことで、実験参加者の募集を伴うような研究に落ち着いて取り組むことが難しかった。機関間での移管作業に伴って、予算を使用できる期間も実質的に限られていた。また、Covid-19の長引く影響により、各種学会や研究会がオンライン開催となったため、成果発表および情報収集の用途として計上していた旅費が、未使用となった。
|
Research Products
(6 results)