2020 Fiscal Year Research-status Report
地域に根差した脳波セルフコントロールによる集中力向上支援システムの開発
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18K13251
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
圓山 由子 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (80723353)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳波 / バイオフィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
ADHD患者の脳波の特性としてガンマ波のパワーが弱く、この脳波特性が衝動性や集中しにくさに関連すると報告がある。これらの症状に対して脳波の状態を音や映像として患者自身に提示するバイオフィードバックの手法が提案され効果を上げている。しかしながら、脳波計測には高額な医療用脳波計が必要なため、この治療法を受けられる患者は限定的である。本研究は、出来るだけ低コストなオーダーメイド脳波計を用いた汎用的集中力向上支援システムを開発する。2020年度は(1)コントロールする脳波の定量的選択法、(2)フレキシブルに装着できる電極の開発について主に取り組んだ。 (1) コントロールする脳波の定量的選択法 被験者によって脳波の各周波数帯域のパワーは異なり、同じ被験者でも日によって脳波の出方が異なる。なるべくストレスなくコントロール訓練を行うためには訓練初期に被験者が最も制御しやすい帯域と記録箇所を選定する必要がある。これには脳全体を同時計測する必要があるため、長岡技術科学大学電気電子情報工学専攻和田研究室の医療用脳波計を用いて、最も制御しやすい領域の同定を行った。評価項目としてパワーの平均値とベースラインからの変化率、ノイズの混入率から最適な記録箇所を選定した。その結果、選定した当日であれば精度のよいコントロールが可能であったが、半数近くの被験者(3/7)においては翌日以降の精度が当日より下がる結果となった。 (2) フレキシブルに装着できる電極システムの開発 ADHD傾向のある患児の保護者からの聞き取り調査により、こちらから計測用のキャップ等を提供するのではなく、患児が普段使い慣れた帽子に取り付けることはできないかとの提案を受けた。そこで、電極と脳波ジェルを浸したスポンジを組み合わせ、既製品の帽子の内側に取り付けて記録を試みたが、これまでの脳波キャップに比べると安定した記録の維持が困難な現状である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脳波の記録及び刺激システムの基本的な要素は確立しており、学生を中心とした被験者での検証は行っている。しかしながら、低年齢のADHD患者において統計的な検定を行えるレベルの検証を行っていないため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は以下のような計画で課題を遂行する。(1)機械学習による汎用的な記録箇所の同定、(2)フレキシブルな記録電極の開発、(3)家庭での評価。今年度の成果を踏まえて各項目以下の方針で研究を進める。 (1)機械学習による汎用的な記録箇所の同定: 医療用脳波計の計測結果を基にして被験者一人ひとりに適した記録箇所及びコントロールする帯域の選定を行うことは理想であるが、汎用的な脳波コントロールシステムの実用化の観点では非現実的である。次年度は医療用脳波計の計測結果を基にして機械学習を行い、簡易脳波計で扱えるチャネル数内で最も効果的な計測箇所を同定し、効果を検証する。 (2)楽しんで装着できる脳波キャップの開発: 本年度の課題を次年度も継続して行う。ADHD患児は感覚過敏の症状を示す場合があり、普段身に着けている帽子やヘッドギアに取り付けることができるのが望ましいが一般的な衣服の固定力は低く電極を安定して取り付けることは困難である。安定した記録のためには締め付け感を完全になくすことは困難であるが装着感の向上は継続的なトレーニングに必要不可欠な要素である。この問題を打開するため、よい香りや夏期は冷感のある素材を加え、不快感の軽減を狙う。 (3) 家庭での評価:コロナの影響により療育施設や保育施設での検証は今後しばらく困難であると考える。次年度はオンラインでのワークショップなどを通じ、家庭で検証していただくよう協力を仰ぐ予定である。
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Causes of Carryover |
ATR-Promotions社製のアンプ(60万円)を購入予定であったが、2021年10月1日より長岡技術科学大学電気電子情報工学専攻和田研究室に所属し研究室所有の医療用脳波計を使用できることになった。精度の高い機器を用いて計測してバイオフィードバック効果を詳細に解析し、簡易脳波計で必要な電極数を再検討するため購入を見合わせた。また、コロナウィルス蔓延のため学会参加、共同研究のためのミーティングがオンライン開催になったため、旅費が約30万円減額となった[2020年7月neuro2020(3泊4日), 2020年8月京都産業大学伊藤浩之教授との共同研究(2週間程度)]。本年度は医療用脳波計の計測及び機械学習の結果から算出された記録チャネル数に応じたアンプを購入する予定である(ATR-Promotions社ないしOPEN BCI社製アンプ50万円~70万円)。その他は脳波キャップの装着感改善のための素材購入に充てる予定である。
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