2019 Fiscal Year Research-status Report
化学教育における「電子のふるまいを表現した化学変化のモデル」の理論的・実践的研究
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18K13261
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
渡邉 大輔 東京都市大学, 共通教育部, 講師 (90636193)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分子モデル / 化学変化 / 電子 / 階層間相互移行 / VR技術 / AR技術 / 分子模型システム / 高校科学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高校化学教育における「電子のふるまいを表現した化学変化のモデル」について理論的・実践的研究を行うものである。 化学変化のような分子中の原子のくみかえ、その際の電子のふるまいを教えるときには、対象の構造・法則・機能等のなかから「何のために、何を、どこまで表現するか・できるか」という「要件」を明らかにしていくことが課題となる。本研究では、高校化学教育における目的・内容・方法を〈電子〉のレベルで見直す立場から、教育内容・教材構成における「要件」について理論的・実践的検討を積み上げ、高校生に理解可能な分子モデルを開発することを意図している。 2019年度は「自然の階層論」とよばれる自然認識研究、科学哲学におけるモデル論に依拠し、化学教育に有効と考えられる化学論(化学の対象と定義)、モデル論(モデルの構造と認識論的機能)、授業におけるモデル導入の条件を抽出し、分子模型の評価(適用範囲と限界の把握)を行った。 これによれば従来の模型では、うごく分子模型などの試みは存在するものの、材料的・工作技術的な制約によって原子の組み換えにとどまり、「階層間相互移行(各階層(原子核・電子ー原子ー分子ーマクロ物質)は互いに依存し間断なく移行しあう)」の過程を表現できない。この過程をなんらか示すことが本研究の本質的課題であるとの理解に至った。 ブレイクスルーを得るためには、現実空間で何ができて何ができないのかを「階層間相互移行による分子の”変化の過程”を示す」という観点から検討していく必要がある。そこで、本研究では、VR技術によって視覚的に表現し、AR技術(ハプティックデバイス)によって力覚的に提示した、化学変化の本質的理解を促す分子模型システムを構築する方針を採る。2019年度は以上の考察を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画とは必ずしも一致しないが、上にのべた意味において、現在までに教育内容・教材構成上の「要件」を明らかにしつつある。一方で、技術的な実現可能性、実装すべき最低限必要な機能とは何かに照らして「要件」をブラッシュアップしていく。2020年度中にモデルの完成を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、技術的な実現可能性、実装すべき最低限必要な機能を子細に検討してに「要件」をブラッシュアップし、分子模型システムを具体化する。以上をもとに2021年度に高校での実験的授業を実施したい。
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Causes of Carryover |
VR技術・AR技術を駆使した分子模型システムを開発するためには、仮想空間の構築を専門業者に依頼する必要がある。単年度予算では不足する恐れがあり、また要件が整い次第、すぐに発注できるよう、前倒し請求を行った。このため次年度使用額が生じている。今後の使用計画としては、仮想空間構築と力学提示装置の購入、これを統合していくPC・分子モデリングソフトの購入に充当する。
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