2022 Fiscal Year Research-status Report
化学教育における「電子のふるまいを表現した化学変化のモデル」の理論的・実践的研究
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18K13261
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
渡邉 大輔 東京都市大学, 共通教育部, 講師 (90636193)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 化学教育 / 化学変化 / 溶解 / モデル / 溶質と溶媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高校化学教育の内容・方法を電子で基礎付ける立場から、教育内容・教材の「要件」を理論的・実践的に検討し、教育として妥当なモデルを明らかにするものである。 これまで自然諸科学、科学哲学におけるモデル論に依拠して分子模型の評価を行ってきた。従来の模型は、現実空間における材料的・工作的・技術的な制約により、複数の階層にまたがる変化の過程を表現できない。この限界は、VRで視覚的に、ARで力覚的に提示して克服できる可能性がある。しかしながら、コロナ禍の影響はもとより、デバイス自体が発展途上にあり、妥当な要件を保証できなかった。 そのため研究期間を延長して、教育実践における理論的研究を進めた。特に、高橋金三郎の知見に基づき、極地方式研究会による化学テキスト群(「とけるもの とかすもの」「しおのなかま さとうのなかま」「金属」「酸のはたらき」「塩ーイオン化合物」)の理論的・実践的検討を進めた。 本研究課題との直接的な関連に限定して成果を述べれば「もし粒が見えるとしたら」と粒を描かせる教育は、①固体でいられなくなった溶質を固体的に描かせるのは妥当ではない。②意味があるとすれば、溶質と溶媒がくっついて離れない相互作用である。③従って溶媒も同時に描かせる必要があるし、④電気的相互作用を教えるならば小学校・中学校の課題を超える。⑤モデルの表現に先立ち示すべき現象は「拡散(とけたものは沈澱せず溶液の上部からも抽出できる)」である。⑥化学変化一般としては「変化するには相手がいる」との理解であり、ここから電気的陰性・陽性を電子のレベルで基礎付ける教育が必要だろう。⑦従来の化学教育研究では、拡散現象を示さないまま固体的粒を描かせる調査研究が多くをしめるが、シュトフ(1960)、岩崎・宮原(1976)らのモデル論とは相容れない。現象の可能的解釈としてのモデルの提示が妥当と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績のうち、溶解、酸のはたらきに関する既存の問題点と解決方法については、一定の根拠を得た。 また、従来の化学教育のモデルの系譜についても、概ね考察が終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況を踏まえ、2023年度中に論文化を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による影響を受け、研究期間を延長した。 2023年度は、研究成果の出力(主として論文・発表)にかかる費用に充てる。
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