2018 Fiscal Year Research-status Report
葛藤解決における寛容の研究:寛容動機と第三者の役割
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18K13273
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
山口 奈緒美 (高田奈緒美) 東北福祉大学, 教育学部, 講師 (90550179)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 寛容 / 葛藤解決 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の核心的な問いは、被害者の寛容をいかに高めるかである。これを達成するために、(1)なぜ被害者は加害者を許せないのか、寛容抑制の動機的基盤を解明し、(2)第三者のどのような反応がその非寛容動機を和らげるのかを明らかにする必要がある。2018年度は(1)を明らかにすることを計画し、研究を実施した。 2018年度においては大学生に対して質問紙調査を2回実施した。この質問紙調査では、参加者に過去の被害経験を思い出させ、その経験について、加害者をどのくらい許せたか(寛容)、なぜ許せなかったのかについて動機の観点から回答させた(寛容抑制動機)。寛容抑制動機を測定した項目に対して因子分析を行った結果、予測通りの結果が得られた。同様の加害行為を加害者に繰り返されたくないという「被害反復抑制動機」、加害者にも苦痛を与えたいという「報復動機」、被害経験の責任帰属について周囲の人に誤った推測をされたくないという「無過失承認動機」という3つの動機が見いだされた。これらの動機は、再度、質問紙調査を行った結果、再現された。 こうした動機が見いだされたことは、第三者が被害者にどう関わることが有益なのかについて重要な示唆を与えるものである。寛容を抑制する動機には、「相手を許した結果、自分にも非があったと周囲の人から誤解されるのではないか」という無過失承認動機がある。観察者がもしこのような動機を無視して被害者に接すれば寛容喚起の可能性を狭めてしまうが、もし、この動機を満たすように接することができれば、寛容喚起の可能性を高めることができる。寛容は、加害者の謝罪に代表されるように、加害者に関する要因のみによって規定されると考えられがちであるが、第三者がこれを高めることができることを、本研究は示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究計画通りに遂行できている。また、得られた結果も、仮説をおおむね支持するものであり、研究計画の変更を迫られることもなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、被害者の寛容をいかに高めるかについて具体的な示唆を得るために、(1)なぜ被害者は加害者を許せないのか、寛容抑制の動機的基盤を解明し、(2)第三者のどのような反応がその非寛容動機を和らげるのかを検討することを目的としていた。交付申請書に記載した計画通り、2018年度において(1)寛容抑制の動機的基盤は明らかにできた。今後は、(2)の課題について取り組む。 2019年度においては、第三者による被害者の無過失承認動機の充足が寛容を促進するのかどうかを確かめ、どのような条件においてこの因果関係が成立するのかどうか、シナリオ研究を用いて検討する予定である。
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Causes of Carryover |
学会参加・旅費を申請していたが、旅費を必要としない場所で開催されたため。 調査が順調に進み、謝金が一部不必要になったため。
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