2019 Fiscal Year Research-status Report
協力の文脈における人間の行動規則の推定:計算論モデルからのアプローチ
Project/Area Number |
18K13276
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
堀田 結孝 帝京大学, 文学部, 准教授 (90725160)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 協力 / 互恵性 / 学習 / 利他行動 / ベイズ統計モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,協力の文脈における人間の行動パターンを実験データへ計算論モデルを当てはめる解析を通して検討することにある。
昨年度は複数の参加者の間で相互作用の相手を毎回変えて繰り返し資源を分配し合う経済ゲーム実験を行い,実験での参加者の行動パターンを予測する上で最適なモデルをモデル選択を通して検討した。本年度は昨年度の研究との比較として,昨年度は見知らぬ他者との交換状況を対象としたのに対し,同じ相手と繰り返し相互作用を行う状況を対象として,同様に参加者の行動を予測する上で最適なモデルを探った。進化ゲーム理論において,相手の行動に反応して協力する確率を変化させる互恵的な戦略と,利益の変化に応じて行動を変える戦略が,有効な戦略としてよく知られている。本研究では,これら2つの戦略及びその派生型を表現した計算論モデルを実験データに当てはめ,予測力の比較を行った。解析の結果,いずれの相互作用状況でも共通して,相手の行動に反応するのみの単純な互恵性モデルではなく,利益の変化に応じて行動を変化させるモデルが実験データを予測する上で最適である可能性が示唆された。解析の結果は,協力の文脈における人々の行動は単純な互恵性に基づくのではなく,かつ単一のモデルで協力の文脈における行動のバリエーションを効率的に予測できる可能性を示唆している。
2018年度及び2019年度に行った実験結果をまとめて,論文として投稿する準備を進めている。また,実証データから示唆されたモデルから実験と同様の結果が再現されるかを数値計算で検討し,個人の行動規則と社会的帰結との関係を探る理論研究を行う予定である。更に,追加でフォローアップのための実験をすることも検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属機関の研究施設がリニューアルされたことで実験環境が充実したこともあり,計画していた実験研究を順調に遂行することができた。現在,実験研究の成果を論文でまとめる段階に入っている。概ね予定通りに進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍により,参加者を実験室に呼んでデータを取るかたちの研究の実施が困難となる可能性が予測される。従って,2020年度は,2019年度までに既に取得したデータの詳細な解析,理論研究,及び論文執筆に集中的に取り組む。Webによる研究で追加データを取得する方策も計画している。
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Causes of Carryover |
実験データの取得及び論文執筆に対して集中的に取り組むため学会での研究発表を見送ったことにより,出張旅費がかからなかったため。理論研究及び実験データの解析用のマシンの購入,実験用マシンの更新,及び現在執筆している論文の校閲及びオープンアクセスに伴う費用に充てる。コロナ禍により実験室実験の実施が困難であることも予測されるため,Webを介した研究の準備にも充てる予定である。
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