2018 Fiscal Year Research-status Report
「相手のため」の恩恵のやり取りが個人と関係に不適応をもたらすプロセスとその対処法
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18K13277
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
宮崎 弦太 東京女子大学, 現代教養学部, 講師 (80636176)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 共同規範 / 交換規範 / well-being / 夫婦関係 / 恋愛関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
自分の関係相手(パートナー)のために見返りを求めずに恩恵を提供するという共同規範は、親密関係の理想と考えられている。しかし、その理想の規範が個人と関係に悪影響をもたらす可能性があることについてはあまり注目されてこなかった。2018年度は、共同規範の遵守傾向の個人差である共同志向性に注目し、共同志向性が本人とパートナーのwell-beingを低下させる条件とその媒介メカニズムについて検討した。 2018年度に学会発表を行った夫婦関係調査では、配偶者が自分の欲求に受容的に応じる期待の低い(配偶者の応答性を低く知覚している)場合、配偶者への恩恵提供に対して後悔を感じる状況において、高い共同志向性が本人のwell-beingを低下させる可能性が示されていた。2018年度の第1調査では、恋愛関係を対象に上記の結果が再現されるかどうかを検討した。その結果、恋人の応答性知覚にかかわらず、強い共同志向性は本人のwell-being(人生満足度とポジティブ感情)を高めることが明らかになり、個人と関係に悪影響をもたらすことは示されなかった。そこで、本研究課題の以降の調査は夫婦関係を対象に行うことにした。 2018年度の第2調査では、夫婦ペアデータを収集した。調査の結果、強い共同志向性が個人のwell-beingを低下させることを示す結果が得られた。夫が自分の妻の応答性を低く知覚している場合、夫の共同志向性が強いことが妻のポジティブ感情を弱めることが示された。また、妻が自分の夫の応答性を低く知覚している場合、夫の共同志向性が強いことが妻のネガティブ感情を強めることが示された。 以上より、2018年度に実施した研究では、夫婦関係において配偶者の応答性を低く知覚していることが、夫の強い共同志向性が妻のwell-beingを低下させる1つの条件となっていることが示唆されたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は、共同志向性が本人とパートナーのwell-beingを低下させる条件とその媒介メカニズムを明らかにするために、当初の計画どおり2つのweb調査を行った。夫婦ペア調査の結果は、共同志向性がパートナーのwell-beingに及ぼす影響が夫婦双方の配偶者の応答性知覚によって調整されることを示しており、本研究課題の仮説と一貫した結果が得られている。この点で本研究課題は進展しているといえる。 一方、共同志向性がパートナーのwell-beingに及ぼす影響を調整する要因については、先行研究でもまだ知見が蓄積されていない新規な知見であるため、研究結果の再現性を確認する必要がある。加えて、2018年度の調査結果からは、共同志向性の影響を媒介する要因については明らかにできなかった。 これらのことから、本研究課題について進展はあるものの、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、夫婦ペアを対象とする調査を当初計画に追加して行い、2018年度調査の結果の再現性を確認するとともに、夫婦関係における共同規範の遵守が夫婦双方のwell-beingに及ぼす影響を媒介する要因として、恩恵提供の有効性の知覚や恩恵提供の動機の知覚を新たに測定する。 そのうえで、共同規範の遵守がwell-beingを低下させる状況において、交換規範の遵守が夫婦双方のwell-beingに及ぼす影響を明らかにするため、夫婦ペアを対象とした調査を行う。当初計画では配偶者のいる個人を対象に日誌法研究を行う予定であったが、パートナーのwell-beingに及ぼす影響を検討する必要が生じたことから、研究計画の変更を行うことにした。
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Causes of Carryover |
次年度に追加調査が必要になると予想されたため、本年度の予算をその一部として確保した。
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Research Products
(1 results)