2018 Fiscal Year Research-status Report
深い悲しみをどう乗り越えるか:感情表出促進パラダイムによる生理心理学的研究
Project/Area Number |
18K13285
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
白井 真理子 同志社大学, 心理学部, 助教 (70802271)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 感情 / 心身相関 / 悲しみ / オノマトペ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、身体表出の促進が、死別のような深い悲しみに与える影響を包括的に検討することを目的としている。大切な人を喪うときに感じる「深い悲しみ」は、感情麻痺を引き起こす精神症状に繋がることがある。感情が心身の相互作用から生じるとの考えに基づけば、身体表出によりネガティブ感情の表出を促すことにより、悲しみの早期低減を実現できる可能性がある。 本年度は、まず本研究のベースとなる死別と失敗の悲しみが異なる感情概念として記憶表現されていることを示した研究について論文化を行った。次に、死別の悲しみがどのように内在化しているのかという心理過程について、神経生理学的観点からの研究を実施した。死別と失敗の悲しみの区別に関わる事象関連電位(ERP)を検討するため、プライミングパラダイムを用いた実験を行った。その結果、死別場面とより関連が強い死別適合語に関しては、プライム刺激が死別場面であった場合のERP波形が、失敗場面であった場合の波形と比較して異なっていた。この特異的なプライミングERP効果は、悲しみのサブタイプが異なる感情概念として記憶表現されていることを示唆している。つまり、言語レベルにおいては、死別の悲しみに選択的に関連する身体表現が明らかになった。この研究結果は学会で発表を行い、現在論文化を行っている。加えて、申請者の研究に関連する「悲しみ」感情の特性を深く理解するため、これまで報告されている悲しみ喚起場面に加え対人場面により生じる悲しみに焦点を当て、他人から笑われたときに悲しみを覚えるのかについても調査を行なった。また悲しみはどういった特徴から構成される感情かについても調査を行い、それぞれ研究成果を学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、身体的表出の促進が死別時に喚起されるような深い悲しみに与える基礎的知見を得るために、まず、死別の悲しみがどのように内在化しているのかという心理過程を明らかにした上で、悲しみと身体的表出の関連を調べることを目的としている。本年度は、この心理的過程について、言語レベルの特性に関して誌上発表を行うことができた。さらに神経生理学的観点からも死別の悲しみと選択的に関連する身体表現の同定を示す実験を行うことができた。したがって、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、神経生理学的観点からの研究データを論文化することを目指す。同時に、次の目的である言語レベルでの表出特性と実際の身体的表出特性との関連を明らかにするため、死別の悲しみと身体表出の関連性について検討する。具体的には、先行研究により示された死別関連語と失敗関連語の泣きのオノマトペからイメージされる実際の身体表出行動を測定する実験を行う予定である。
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