2019 Fiscal Year Research-status Report
情報探索における思考停止現象の解明:中高生を対象とした支援方法への展開
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18K13294
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小野田 亮介 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50780136)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 情報探索 / 情報発信 / 理由想定 / プレゼンテーション / 意見文 / 認知バイアス / 反論想定 / 説明深度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,情報の探索や吟味を途中で放棄したり,諦めたりする学習者の状態を「思考停止」と捉え,思考停止現象の特徴を明らかにするとともに,そうした学習者への指導方法について提案することを目的とする。 申請者のこれまでの研究から,情報発信のための情報探索においては,生徒が「それまでに探索した情報で十分(に説得や説明が可能)な受け手」を想定する場合に情報探索が停滞すること,および生徒は情報探索プロセスにおいてそうした受け手を自発的に想定する可能性があることが示された。そこで本年度は,第1に,高校生を対象として(1)読み手を想定する条件,(2)読み手を想定して可視化する(変更可能)条件,(3)読み手を想定して可視化し固定する条件(変更不可)とで産出される文章に含まれる情報を比較した。その結果,読み手を可視化する場合に情報探索は促され,読み手変更の可否によっても情報の質に違いが認められた。すなわち,誰に向けて情報を発信するかによって,情報提示の方法だけでなく情報探索の質も変化する可能性が示された。 第2の研究では,情報探索における思考停止が自分の思考や判断に対する過剰な確信度によって生起していると仮定し,大学生を対象として,自分の思考に対する確信度を揺らがせる介入により,情報探索の傾向が異なるかどうかを検証した。説明深度課題を自分の思考に対する確信度を低減させる介入として実行し,その前後で情報探索の傾向を比較した。その結果,説明深度課題後に多様な情報探索が促されることが示された。この研究は,自分の思考や判断に対する過剰な確信が情報探索を抑制する可能性を示唆する点で重要な基礎的知見だといえる。次年度研究では,これらの知見を中高生の情報探索に応用することで,中高生の思考や判断に対する確信度と思考停止現象との関連について明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果から思考停止現象の原因について推定し,情報探索を促す介入の効果検証を行った。その結果,情報の受け手に対する介入によって,多様な情報探索が促進される可能性が示された。 また,情報探索における思考停止現象が生起する原因として,自分の思考に対する過剰な確信度の影響があることを仮定し,大学生を対象とした実験によって,自分の思考や判断に対する確信度が低減するときに情報探索が促進されることを明らかにした。この結果は,情報探索における思考停止現象が自分の思考や判断に対する過剰な確信度によって生起しうること,およびその確信度を外的に低減させることで思考停止現象は解消可能であることを示唆する点で重要な結果であったといえる。 研究協力校とはこうした研究成果について共有し,中高生を対象とした指導方法についても協議を重ねている。以上のことから,おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
収集したデータの解析を進め,成果を論文としてまとめる。また,大学生を対象とした得られた結果を中高生で再現すると共に,学校教育における情報探索活動において思考停止現象を解消するための指導方法を考案し,その効果検証を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:新型コロナウイルス(COVID-19)の流行により参加を予定していた学会が中止となったため 使用計画:基本的に申請時の計画通りに研究を進める
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