2021 Fiscal Year Research-status Report
スクール・エンゲージメントを促進する対人ネットワーク機能の検討
Project/Area Number |
18K13304
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
吉武 尚美 順天堂大学, 国際教養学部, 准教授 (40739231)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | スクール・エンゲージメント / 縦断調査 / メンタルヘルス / 対人ネットワーク / 中高生 / ネットの問題利用 / スクールカースト / キャラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,学校生活全般への参加態度を行動,認知,情動の側面から把握するスクール・エンゲージメント(以下,SE)という概念に注目し,中高生の学校生活への意欲の向上や不登校予防に資する対人支援のあり方を検討することを目的とした。今年度の成果は以下の通りであった: ①学会発表:中学生の学級構造とSEの関連性を検討し,カースト上位者は友人関係における役割キャラを積極的に受容して関係性を維持し,情緒的・認知的エンゲージメントが高いことが示された(日本教育心理学会第63回総会,2021年7月)。また,SEとネット利用との関連性を検討した。1つ目に,リアル世界でネガティブな交流が多いとネットの過度な利用を通して学校生活への意欲が低くなる可能性が示唆され,高校生より中学生でその傾向が顕著であることを明らかにした(32nd International Congress of Psychology,2021年8月)。2つ目に,新型コロナウイルス感染流行前後でネット利用が有意に増加し,動画,ゲーム,SNSの利用時間が長いとSEが低下することを示した(第85回日本心理学会,2021年9月)。 ②論文投稿:青少年の適応を病理的・肯定的な2側面の高低で捉えた4つのグループを想定し,高校の3年間で対人関係や学校生活がどのように変化するかを追跡した(Journal of Medicine and Heakth, in print)。 現在は,昨年度末に収集した小中学生の郵政調査の結果分析と,ネット利用とSEの関連性についての論文化を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は過去2年間において計画していた調査が新型コロナウイルスの影響で実施できずにいたが,状況収束の兆しを受けて研究期間を令和4年度に延長し,追加の調査を実施した。当初予定していた中学校に直接依頼する方針を変更し,令和4年2月~3月にかけてウェブ調査会社の成人モニターを通して小中学生に郵送調査を実施することができた。今後は結果の分析と論文化を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に学会発表した研究の論文化を進めるとともに,年度末に実施した小中学生を対象とした質問紙調査の分析と発信を行う: ①ネット利用とSEの関連性:リアル世界での人間関係の不充足度をネット世界で満たそうという対人補完仮説の検証を行う。 ②周囲の人との関係性とSE:親,友人,教師とのやり取りの質とSEの関連性について(誰とのどのようなやり取りが重要なのか),学校段階の差異に焦点を当てながら明らかにする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染流行の影響で当初見込んでいた国際学会での参加発表に関わる交通費や参加費用が大幅に削減されたため余剰が生じている。今年度は収拾済みデータの分析結果について,国内外での学会発表,論文執筆や投稿にかかわる経費の支出を見込んでいる。できれば海外での学会に参加できるよう準備していく。
|