2020 Fiscal Year Research-status Report
心理教育プログラム実施過程における「自己の強みの受け容れ」に関する研究
Project/Area Number |
18K13307
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
森本 哲介 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 講師 (90780966)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポジティブ心理学 / 強み / 強み受容 / ウェルビーイング / 心理学的介入プログラム / キャリア形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ポジティブ心理学の中でも中核的な研究の1つである「強み」について、強みを中心とした介入プログラム実施における「強みを受け入れる」過程に注目して、強みの受容概念の検証を行っている。本研究の目的は、①強みの受容を構成概念化し,②その発達的変化や、強みの受容の促進要因、強みの受容がウェルビーイングに与える影響を明らかにすることであった。 当該年度の主となる取り組みとしては、2019年度に作成された強み受容尺度の基礎的研究の充実を図った。15歳以上から65歳までを対象に、既存の強み概念(強み、強み活用感、強み認識)、幸福感、本来感、自尊感情、他者軽視、ポジティブ側面への積極的注目、楽観性、自己愛、文化的自己観、セルフコンパッション、自己志向的完全主義、社会的望ましさ、陽性感情抑制傾向、セルフモニタリング、マインドフルネス、他者からの評価への恐れを測定する心理尺度と、強み受容尺度との関連を調査した。分析の結果,強みを受け入れられることは、ウェルビーイングと正の関連を示しているが、一方で、自己の強みを卑下したり否認したりする傾向は、セルフコンパッションにおける自己批判や過剰同一化、文化的自己観における相互協調的自己観、完全主義傾向におけるミスへのとらわれなどと関連を示すことが明らかとなった。研究成果の一部は,2020年度に発表しており、残りは2021年度に発表する。 研究の副次的な成果として、他者の強みを見出し発揮させる傾向であるストレングススポッティングについて、教員養成課程の学生を対象とした調査研究、現職教員を対象とした調査研究、また就職面接場面における自己アピールを支援する心理学的介入プログラムの実践研究について、論文投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、検証過程の最終段階として,筆者らの先行研究における強みを中心とした介入プログラムに強み受容を促進するプロセスを加えて再構成した介入プログラムを実施し,既存のプログラムとの比較を行う予定であった。しかし、COVID-19感染症の拡大により、多人数を対象とした介入プログラムの実施が困難になった。本年度の中盤まで介入プログラムの実施の可能性を模索し,調査研究費を確保していたため,その期間の研究が十分に進まなかった。最終的には参加協力者の安全を優先し介入プログラムの実施を断念し、オンライン調査を中心とした取り組みを実施した。 他方、本研究にかかわる副次的な成果物について論文化を進めたことから、評価区分はやや遅れている程度と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19感染症の拡大状況により方策を決定する。 感染症が沈静化すれば、介入プログラムを実施し、既存プログラムと新プログラムについて、ウェルビーイングへの効果を効果量によって比較する。 感染症が沈静化しない場合、20年度と同様に介入プログラムの実施は困難と判断し,オンライン調査を中心とした研究計画を遂行する。強み受容とウェルビーイングの関連について追加調査を行い、強みを中心とした介入プログラム実施時の参加者の内的過程をあらわした構造方程式モデルによる分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
20年度は、介入プログラム実施に当たり,参加協力者への謝金を計上していた。また、研究成果の発表のために学会費用等を計上していた。しかしながらCOVID-19感染症拡大によって介入プログラムが未実施、学会は延期等の措置が取られたためこれらに計上していた額が次年度に繰り越された。 21年度に介入プログラムが実施できない場合は,計画されたオンライン調査の費用へと充当する。
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