2018 Fiscal Year Research-status Report
The influence of using distinctive supplementary medias (dolls) in children's event reporting
Project/Area Number |
18K13310
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
上宮 愛 立命館大学, OIC総合研究機構, 専門研究員 (50555232)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アナトミカル・ドール / 子どもの証言 / 司法面接 / 再現 / エピソード記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
子どもの性被害・性的虐待における被害内容の聴き取りでは,アナトミカル・ドール(anatomical doll; anatomically detailed dolls;以下,ADとする)と呼ばれる人形を用いることがある。ADは,解剖学的に正確に作られており,性器や胸のふくらみなどが備わっている。被害にあった身体部位の特定や被害の詳細(体勢,動きなどを含む)についての聴取において,思い出す手がかりとしての役割を果たすと考えられてきた(Saywitz, Goodman, Nicholas & Moan, 1991)。 体験した出来事の内容についての聴き取りにおいて,ADを用いることの問題には大きく分けて2つの要因が影響すると考えられる。1つ目は,人形側の要因である。ADを用いることによって,子どもが実際には体験していない行為を(例,子どもがADの性器の穴に指を入れるという行為を実演してしまうなど)誘発する可能性がある。また,その子どもの報告を評価する側の大人に対しては,実際の正確性や情報量に関係なく,単なる言葉による報告に比べて,ADを用いた報告では,報告内容がより具体的であると感じられ,信用性がより高く評価される可能性がある。 2つ目に,報告する側(子ども,言葉での報告に難しさがある人々など)の要因があげられる。人形を用いた報告では,人形を自分に見立てて(人形が自分の象徴であることを理解し)実演,再現することが求められる。つまり,自分自身を他者の視点で,メタ的に観察・理解し,実際に自分が行なった行動を再現する必要がある。人形を用いた報告は,報告する側の認知発達の問題の影響を大きく受ける可能性がある。 今年度は,「人形側の要因」,そして,「報告する側の要因」の2つの側面から文献レビューを実施し,現在レビュー論文を執筆中である。2つ目に,研究1で使用する人形の選定・再検討を行った。現在,データ収集に向け準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進捗状況の遅れの原因として,2つあげられる。 1つ目には,実験で使用する人形の選定に時間がかかってしまっている点があげられる。研究1では,人形の持つ特徴が子どもの出来事の報告に及ぼす影響について検討することを目的としていた。研究計画当初は,実験の中で実際にADを用いることについて,倫理的な問題があると考えられていたため,代替案として,キワニス・ドールという医療現場で用いられる布製の人形を使用する予定をしていた。しかし,さらなる文献レビューを進め,ADの特徴が性的虐待への聞き取りの中で,実際には体験していないけれども,体験していたとしてもおかしくないような行為を誘発してしまう可能性がある(例:実際には性器を触られていないけど,子どもがADの性器部分に指を入れる行為を実演するなど)という点が大きな問題となると考えた。そのような実験状況をキワニス・ドールで作り出すための工夫が必要になり,現在,過去に収集したキワニス・ドールを用いた実験のデータを参照しながら,キワニス・ドールをベースにして本実験用の人形の作成を進めている。 2つ目には,参加者募集の問題がある。2017年に移動を経験し,現在の所属先の周辺地域でのフィールドの開拓を進めている。参加者募集において,協力を仰げる幼稚園,保育園,小学校等の選定に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1については,人形の選定・作成を進め,今後データ収集の段階に移行する予定である。また,現在進めているレビュー論文の内容の一部について,2019年度実施する実務家等への研修において,情報提供を行う予定をしている。研究1については,2019年度中にデータ収集とデータのコーディング作業を終え,2020年度に学会発表,論文執筆を進めたいと考えている。また,研究1のデータ収集を終え次第,得られた面接映像を編集し,研究2の実験刺激の作成を進める。
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Causes of Carryover |
当該年度の未使用額が生じた主な理由としては,研究1のデータ収集が遅れているため,研究参加者への謝金,分析のための費用が未執行であったことがあげられる。
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