2018 Fiscal Year Research-status Report
通院が困難な子どもの強迫症に対する遠隔認知行動療法の実用可能性と有効性の検証
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18K13315
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
久能 勝 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任助教 (20802573)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 児童強迫症 / 遠隔認知行動療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、強迫症の児童に対して、インターネットを介したテレビ電話システムでの面接による遠隔認知行動療法を、通常治療群と比較するランダム化比較試験(RCT)によって、有効性を検証することである。強迫症の治療には認知行動療法が有効であるが、患者はしばしば強迫症状のために外出ができず、治療のために通院することが困難であったり、近くに子どものこころの医療機関が存在せず、認知行動療法を受けられなかったり、また外出や登校できていたとしても、通院を他児に知られたくないなどの理由で継続的な通院加療が難しい患者もいる。このようなことから、本研究によって児童強迫症への遠隔認知行動療法の効果が明らかになれば、これまで治療を受けられなかった患者が認知行動療法を受けることが可能になり、わが国の保険・医療サービスの向上に寄与することが期待される。初年度は、ランダム化比較試験に向けたデザインを作成した。具体的には、我々が千葉大学で実施してきた対面によるsingle armでの児童強迫性患者への認知行動療法の研究や海外での先行研究による効果量の結果から必要な2群の患者サンプルの数を算出、対象とする患者(10~17歳、知能指数80≧など)の設定、一定期間内に多くの患者数を集める必要があるため有効なリクルート方法(web、ちらしなど)を検討し、作成を行なった。 当初の計画ではFeasibility Studyとして、児童強迫症患者2~3名を対象に、安全性と実用可能性の検討のためのテレビ電話を用いた遠隔認知行動療法を予定していたが、われわれが成人に対して行っている遠隔認知行動療法、また海外で行われた児童を対象とした遠隔認知行動療法の先行研究で安全性・実用可能性が確認されていることから、Feasibility Studyは行わないことに計画を変更し、2018年8月より開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、研究計画の詳細な検討を行ない、副次的評価項目の検討や、使用する評価尺度のライセンスの取得等を行なった。その後被験者募集を行ない、平成31年3月までに9名がアセスメント面接を希望した。そのうち2名は面接前にキャンセルし、3名は強迫症の診断がつかずに研究から除外となった。アセスメント面接にて強迫症の診断がついた4名が本臨床試験にエントリーした。面接を希望した9名中5名が本試験にエントリーできなかったため、計画はやや遅れている。4名のうち2名はランダム化のための割り付けを行ない、残りの2名に対しては、割り付けのための事前検査を行った。割り付けを行なった2名のうち、1名は認知行動療法+通常治療群として遠隔認知行動療法を開始した。1名は通常治療群に割り付けされ、通院治療を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、ランダム化比較試験を継続する。被験者のリクルートを続けるとともに、研究の基本デザインは堅持しつつ、遠隔での認知行動療法を進め、臨床効果を検討していく。遠隔での認知行動療法の効果が認められれば、児童強迫症の患者が治療を受けるにあたり障害となる要素(外出が困難、学校を遅刻・早退したくない、近隣で治療を受けられないなど)が軽減されるために、治療を受けやすい環境の整備という点でも意義があるものと考えられる。
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Causes of Carryover |
当初計画に比べ、被験者のリクルートがやや遅れており、遠隔認知行動療法を開始したのが1名であったことから、患者への謝金がほとんど発生しなかったこと、研究補助者の人件費が発生しなかったことなどにより、次年度に使用額が生じた。平成31年度は上記対象患者のリクルートを引き続き行うが、計画が遅れていた分のリクルートも見込むため、患者への謝金の増額が必要になる。研究の進展に伴うデータ整理のための人件費、その他学会での情報交換などにも使用するため旅費の増額に使用する。
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