2019 Fiscal Year Research-status Report
治癒不能がん患者の心的外傷後成長を目指した集団精神療法プログラムの開発と普及
Project/Area Number |
18K13327
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
石田 真弓 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (80636465)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 治癒不能 / がん / 集団精神療法 / 心的外傷後成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、がんの進行・再発に伴い治癒不能と告知されたがん患者の精神的問題に焦点を当て、その心的外傷後成長(Posttraumatic Growth)を目指した集団精神療法プログラムの開発と、研修会等の開催による普及を目指す実践的研究である。 がん患者にとって進行・再発は「治癒不能」を意味し、その破局的な心理的打撃から精神的健康の悪化が指摘されている。しかし、申請者のこれまでの研究から、治癒不能がん患者を対象とした集団精神療法によって、精神状態の維持・改善がはかられ、心的外傷後成長に至る可能性が示唆された。本研究では、心的外傷後成長を生起させる集団精神療法の具体的な要因を明らかにし、①治癒不能がん患者の心的外傷後成長を目指した集団精神療法プログラム(GP)を治療法として確立させ、②がん医療に携わる臨床心理士や精神科医などを対象に研修会を開催し、精神医学的治療の選択肢としてがん医療に普及させることを目的としている。 本年度は、目的のひとつであったGPプログラムにおけるPTG生起に至るプロセスとGPの機能の解明を中心に、これまでの逐語録の確認、解析をおこない、国際学会にて発表した。GPプログラムにおいては「心的外傷後成長」を直接の目標とはせず、心理的苦悩の軽減を図る上で副次的に得られるポジティブな心理的変容としている。よって、GPに参加することで、心理的苦悩を緩和し、「話す Speak」「聴くListen」「考える Think」のスキルを獲得する。それによって心的外傷後成長に繋がるのではないかという仮説を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本集団精神療法への出席は、患者の体調によるところが大きいことがこれまでの解析で明らかになっている。現在、集団精神療法に参加している人数は3-4名だが、それぞれの体調によって全員の参加が難しく、病状の悪化により予想よりも早く出席が不可能になることも少なくない。対象を再発・進行がん患者としていることによる継続的な介入の困難がここにも現れていると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初の計画では心的外傷後成長について尺度を用い、対象者に継続的な評価を依頼する方法を考えていた。しかし、昨年度予測されたように、GPへの参加、すなわち尺度を用いた評価の実施が研究対象者の体調に依存するところが大きい。よって、GP内での言語的なやりとり、発言内容を分析対象とし、質的な分析を行う方向に変更し、今後も継続的に症例を蓄積し、現実に即した方法で柔軟かつ積極的に研究を進めたい。
|
Causes of Carryover |
GPの実施に伴い、予定していた質問紙を用いた評価が臨床的に困難である可能性があり、質問紙を用いず、作成した逐語データから研究を遂行する方向に方向転換を行ったため。
|