2019 Fiscal Year Research-status Report
Adoption promotion method using multilayered by school counselor
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18K13359
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Research Institution | University of Human Environments |
Principal Investigator |
鈴木 美樹江 人間環境大学, 人間環境学部, 研究員 (20536081)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 学校適応 / スクールカウンセラー / 縦断的研究 / 横断的研究 / 質問紙調査 / 投影法検査 / 小学生 / 高校生 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は本研究において以下の研究結果が得られた。 1)高校3年間の縦断的調査による学校不適応感とロールフルネス(役割満足感)との影響過程について質問紙調査を実施した。交差遅延効果モデルを用いた共分散構造分析を実施した結果,学校不適応感とロールフルネスとの間には,有意な関連が見られた。具体的には,社会的コンピテンス不足が社会的ロールフルネスを媒介して,被受容感の乏しさと不適応徴候に有意な正の影響を与えていることが示された。本結果はパーソナリティ研究に掲載された。 2)小学生が発するSOSを多層的に捉えるために,学校適応に関する文章完成法(以下,SCT)を実施し,児童が先生に対し抱くイメージをスクールカウンセラー(以下,SC)への関心の高さと“不適応傾向”の高さに焦点を当ててテキストマイニングによる分析を行った。その結果,SCへの関心が高い群は,先生に対し「怖い」,「面白い」等一般的な相談相手のイメージとは結び付きにくい印象を抱いていた。そのため,相談相手としてSCに目が向きやすくなっている可能性が考えられる。本研究結果は心理臨床学会にて発表を行った。 3)小学生のロールフルネスが不適応徴候を媒介してSCへの関心に与える影響過程について検証したところ,ロールフルネスは不適応徴候を媒介してSCへの関心に有意な負の影響を与えていた。すなわち,ロールフルネスが低い児童は,不適応徴候を有しやすく,その結果SCへの関心が高くなる可能性が示唆された。本研究結果は心理臨床学会にて発表を行った。 上記に加えて,学校不適応感から学校適応感に至るプロセス下におけるSCによる支援方法について,1次予防,2次予防,3次予防の観点より検討を行い,その結果について論文に纏めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度では、質問紙調査法の観点より,高校生のロールフルネスが学校不適応感に与える影響について,3年間の縦断的研究により明らかにすることができた。また,小学生においては,ロールフルネスが不適応徴候を媒介にしてスクールカウンセラーの関心に負の影響を与えていることを明らかにし,ロールフルネスの低下が及ぼすSCへの関心に与える影響についても検討することができた。 一方投影法については,SCTを用いて不適応傾向とSCへの関心,ロールフルネスの観点より検討を行い,テキストマイニングによる分析を行った。その結果,ロールフルネスが高く不適応傾向も高い群は先生に関する記述として「相談」が布置されたの対し,ロールフルネスが低く不適応傾向が高い群は「話」が布置されていた。以上から,不適応傾向の児童において,被援助行動に至るにはロールフルネスの獲得がなされているか否かが関係している可能性が示唆された。 また,学校不適応感とレジリエンスの関連についても分析を行い,資質的レジリエンスが学校不適応感に負の影響を与えていることが示され,レジリエンスが学校不適応感の保護要因になることが推察された。 なお,具体的な今年度の研究全体についての成果としては、関連論文3編、学会発表4編について学術的発信を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度では,学校不適応感を抑制する保護要因として,小学生の学校エンゲージメントと自尊感情等に焦点を当て,学校不適応感及びロールフルネスとの関連についても詳細な検討を行う。これにより,学校不適応感を抑制するプロセスとその保護要因について明らかにすることを目指す。 また,小学生のロールフルネス尺度の開発に関する研究をさらに進めると同時に,ロールフルネスの学年ごとの変移についても検討し,学会にて発表予定である。 高校生においては,縦断データを整理し,学校不適応感を抑制する保護要因として,ビッグファイブやハーディネスとの関連についても検証を行う。また,学校不適応感とレジリエンスとの関連についての詳細についても更に検討する予定としている。 最後にこれまでの研究結果で得られた知見をまとめることにより,学校不適応から学校適応に至るプロセスについて明らかにし,スクールカウンセラーが行う予防的支援方法について纏める予定としている。
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Causes of Carryover |
業者に縦断研究のひも付けデータ処理等をお願いする予定であったが,業者側の都合により今年度に間に合わず,来年度分で依頼することに至ったため,次年度使用額が生じた。また,国際学会にて発表する予定をしていたが,出産と重なり参加できなかったため,差額金が生じた。次年度において,今回発表できなかった研究について,図書の刊行等も含め成果発表を行う予定としている。
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