2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K13365
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金子 沙永 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60763183)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 視覚 / 同時対比 / 色覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では心理物理的手法と脳機能計測(脳波、fMRI)の2つの手法を組み合わせて、視覚情報処理において空間的時間的文脈がどのように利用されているかを明らかにすることを目指している。2018年度はその中でも特に色情報処理の神経基盤の解明に主眼をおいて研究を行なった。 ヒト色覚処理はごく初期の処理を除いて明らかでない部分が多い。特に皮質での色表現が青―黄、赤-緑の軸を基とした反対色表現なのか、より複雑な表現であるのかについて議論が続いてきた。さらにヒトの色覚は文脈の影響を受けることも知られている。その一例が同時対比と呼ばれる錯視である。周辺の色によって見えの色が変化するこの現象には網膜から始まり高次の色関連領域まで複数の処理レベルが関与していると考えられているが、詳細は不明である。2018年度の研究ではまず定常的視覚誘発電位(SSVEP)と呼ばれる脳波計測の実験手法を用いて様々な色刺激観察中の神経活動を記録した。記録された応答振幅は反対色表現から予測されるパターンとは異なり、皮質内処理のごく初期段階から反対色表現から進んだ色表象が実現されていることが示唆された。関連する研究結果は国際会議において発表された。 また、これまでの研究で色の同時対比には刺激の呈示時間に応じて異なる処理が関与していることが示唆されている。特に異なる脳領域で行われる複数の処理段階間の信号のやりとりを検証するためfMRIを用いて同時対比観察中の脳活動を記録した。 他には色および明るさの同時対比と呈示時間の関係を調べた心理物理実験データ(2012、2017年に論文掲載)に関して因子分析を用いた解析を行なった。解析結果は仮説を支持しており、呈示時間によって働きを変える複数のメカニズムの存在が強く示唆された。この研究は国際誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
色刺激観察中の神経活動を追うSSVEP実験は当初の予定通りデータを取り終え、論文執筆中である。また個人差に基づく心理物理実験データの再解析結果に関しても論文化することができた。色同時対比のメカニズムに関するfMRI実験に関しては、計画していた人数分のデータを取り終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きヒト色覚メカニズムに関する脳波研究と同時対比に関するfMRI研究・脳波研究を中心に推進する。SSVEP研究に関しては2018年度に得られた結果を論文発表すると同時に、これまでの結果から示唆される細分化された色符号化メカニズムの様相を詳細に検討するための実験を実施する。fMRI研究では昨年度までに得られたデータの解析環境を整え、錯視観察時の脳活動について低次処理・高次処理の相互作用を考慮したモデル化を進める。加えて、これまでの心理物理研究で示唆された刺激呈示直後の特殊な神経活動についての詳細な検討を行うため事象関連電位を用いた実験を新たに開始する。本プロジェクトでは複数の大学での実験を想定しているためまず実験環境整備を行い、パイロットデータの取得を目指す。
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Research Products
(4 results)