2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K13365
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金子 沙永 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60763183)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 視覚 / 色覚 / 脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では心理物理的手法と脳機能計測(脳波、fMRI)の2つの手法を組み合わせて、視覚情報処理において空間的時間的文脈がどのように利用されているかを明らかにすることを目指している。前年度までに定常的視覚誘発電位(SSVEP)を用いてヒト初期視覚野での色表象の様相について検討した。各等輝度色刺激に対する応答パターンから当該領域では皮質以前での反対色表象だけではなく、そこから進んだ知覚色の表象が存在し始めていることが示唆された。サル等のモデル動物を使用した研究では第一次視覚野ですでに反対色よりも進んだ表象が存在することが示されていたが、ヒト脳で同様の結果を示した結果は少ない。本年度は前年度までの研究をさらに発展させ、特にヒト初期視覚野での中間色の表象について検討するため同様のSSVEPを用いたパラダイムでマスキング実験を行なった。実験結果から中間色をマスク刺激とした場合、SSVEP応答がマスク刺激周辺で選択的に弱まることが示され、初期視覚野での中間色表象の存在が示唆された。本研究内容はVision Sciences Society 19th annual meetingにて発表された(ポスター発表)。また同様のSSVEPを用いた実験パラダイムによって乳児(5-6ヶ月児)を対象とした研究も進められている(日本視覚学会2020年冬季大会で発表[共著])。 また本年度はRutgers大学(米国)のAlan Gilchrist教授との共同研究として明度知覚と刺激呈示時間の関係性に関する実験も実施した。異なる照明環境を含む奥行きのある刺激配置での明度判断課題においては、呈示時間に依存して異なる要因が知覚に影響を与えることが示唆された。この研究はVision Sciences Society 20th annual meetingに採択済みである(オンライン開催予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに得られたfMRI実験のデータ解析などに当初の予定以上の時間がかかっており、論文発表にまでは至っていないがヒト色覚メカニズムに関するSSVEP実験、傾き対比に関連した神経応答に関するERP実験など複数のプロジェクトが順調に遂行されている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度は昨年度までに得られた研究結果の成果発表(ヒト色覚メカニズムSSVEP実験、明度知覚の呈示時間依存性の実験等)を重点的に行う。また、同時対比の時間特性の決定要因となる視覚特徴横断的なメカニズムを探る心理物理学的研究も行う。これまでの研究では (1)明るさ・色・傾きの視覚特徴に関して、刺激呈示時間が短いほど同時対比の錯視量が大きくなること(Kaneko & Murakami, 2012など)(2)明るさ・色の同時対比には刺激呈示時間に応じて異なる発生機序が関与していること(Kaneko et al., 2018)が明らかになっている。これらの結果から錯視量をトップダウン的に制御する「遅い」メカニズムが存在すると考えられるが、そのようなメカニズムが各視覚特徴に特有に存在するか、あるいは特徴横断的に働く共通メカニズムであるかということは明らかでない。本年度は対象とする視覚特徴をさらに広げ、視覚特徴普遍的な同時対比メカニズムについて検討する。
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Research Products
(5 results)