2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K13367
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
田中 絵実 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 認知症先進医療開発センター, 研究員 (30462203)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多感覚統合 / カテゴリー弁別 / 脳磁図 / 脳活動の時空間動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間は日常的に様々な感覚系から継続的な入力を受けている。このような多感覚入力環境下における我々の適応的な知覚認知・行動は、神経系がこれらの入力から素早く変化を検出し、感覚系間でそれらの情報を照合・統合し、適切な行動に結び付けることで可能になっている。本研究課題では、この過程のうち、カテゴリーの感覚種間照合に関わる脳磁場活動に着目し、その時空間動態を明らかにすることを目的としている。 本研究では、視覚刺激と聴覚刺激を継続的に呈示している間に、被験者に2種類の課題を遂行してもらい、その時の脳磁場活動を比較することで、カテゴリー照合に関連する脳内ダイナミクスを検討する。実験では、視覚刺激と聴覚刺激が継続的に呈示されるため、刺激呈示回数の影響を最小限に抑えるため、刺激の呈示回数に偏りが出ないようにすることが必要であり、かつ、視覚と聴覚の呈示内容の組み合わせパターンの回数に偏りが出ないようにする必要がある。また、脳磁図計測には、正確なトリガー取り込みが必須であるため、パソコンやプロジェクターのタイムラグを考慮してトリガー信号を作成することに関しても細かい調整が必要である。 本年度は、上記の条件を満たした呈示刺激を完成させ、予備実験を実施する計画であった。刺激の作成については予定通りおこなった。一方で、予備実験に関しては、COVID-19の感染が予想以上に収束せず、昨年修正した計画の通りに実施することは困難であったため、再度予定を変更し、実験実施後に必要となる解析方法について、別の多感覚同時提示刺激に対する脳磁場データを用いて試験的に検証し、今後の解析の効率化に備えることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画では、昨年度作成していた刺激を完成させ、トリガー等の正確性について確認検証し、予備実験を実施する予定であった。呈示刺激の作成に関しては、予定通りに実施することができた。一方で、予備実験の実施に関しては、COVID-19の感染状況が予想より収束せず、研究実施機関や所属機関の感染防止対策の観点から実施が困難となり、研究計画の変更が必要であった。 研究協力者とディスカッションを重ね、他者との接触を避けて実施可能な研究推進方法として、実験後に必要となってくると予想される「解析方法の検討」を行うこととした。具体的には、実施予定であった実験と関連した多感覚同時刺激時のデータを用いて、解析方法や統計処理のパラメータなどをいくつも試してみることで、より効率的な解析方法を探していくという作業をおこなった。その結果、ある程度の信頼性と効率性のバランスを保ったパラメータの範囲を見つけることができたため、実験後の解析の効率性を高めていくのに貢献するデータを得たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の感染状況が収束傾向に転じた場合には、予備実験と本実験を実施する。その際は、十分な感染予防対策を講じたうえで、被験者をより限定して実験を実施する。具体的な対象者としては、協力研究者や研究実施機関に所属している大学院生など、実験前後の接触者の詳細な追跡が可能な者のみとする予定である。申請時の研究計画時より被験者数が減少してしまう可能性はあるものの、感染拡大と研究遂行のバランスをとりつつ、可能な範囲で実験を実施し、並行して本年度検討をおこなった解析方法を用いて解析を進めることで、効率的に研究を遂行していく予定である。 感染状況が現状よりも悪化した場合の研究計画の変更に関しては現在検討中であるが、大幅な研究計画の変更が必要になると予想されるため、変更内容とその意義や実施可能性等について、研究協力者との一層の議論と重ね、研究目的に沿った有意義な方策を探っていく。
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Causes of Carryover |
昨年度からのCOVID-19の感染拡大により実験実施が困難な状況が続いたため、実験室内での使用機器や、謝金、施設利用費等が不要となったこと、参加予定であった学会大会がオンライン開催や中止となり、そのための費用が不要となったこと、また、研究実施機関への出張の回数が制限されたことなどの理由により、当該助成金は次年度へと繰り越されることとなった。次年度には、前年度に予定していたシステムの実験室への導入、予備実験・本実験の実施による必要機器の購入や、研究実施機関への出張、解析ソフトのメンテナンス、被験者謝金、施設利用費等として当該助成金を使用する予定である。
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