2021 Fiscal Year Research-status Report
異種感覚情報の時間的統合に感覚間協応が果たす役割の解明
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18K13370
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 健太郎 九州大学, 人間環境学研究院, 講師 (30727087)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 感覚間協応 / 視聴覚相互作用 / 感覚統合 / 音声環境 / 時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
異種感覚情報の時間的統合における感覚特徴の役割を明らかにするという目的のもと,当年度は主に(1)感覚間協応の因子構造の検討と,(2)視聴覚間相互作用の文化間比較を行った。以下に具体的な検討内容を記述する。 (1)多様な感覚間協応のメカニズムの違いを整理するため,10種類の視聴覚間における協応に対して同一の参加者にオンラインで回答を求め,参加者間での評価傾向の一貫性をもとに種類毎の共通性・差異性を検討した。実験の結果,協応のパターンは概ね先行研究と一致しており,探索的因子分析によって意味的協応,感覚的協応と解釈しうる2因子が抽出された。この結果から,視聴覚における感覚間協応には少なくとも異なる2つのメカニズムが関わっている可能性が示唆された。この成果について日本心理学会第85回大会で発表を行い,学術大会特別優秀発表賞を受賞した。 (2)音高(ピッチ)の変化と視覚的運動の相互作用に音声環境が及ぼす影響を検討するため,声調言語である中国語を母語とする話者と,非声調言語である日本語を母語とする話者の間で比較を行った。実験では,上方向と下方向にドリフト運動するグレーティングパターンを重ね合わせた刺激を用い,相対的な輝度コントラストを操作して,恒常法により運動方向判断が50%になる地点を求めた。その結果,視覚刺激と同じタイミングで上昇または下降ピッチ音が提示された場合,ピッチの変化方向に対応した運動方向の判断が有意に多かった。一方で,ピッチ変化による影響の程度に中国語母語話者と日本語母語話者で違いは示されなかった。この結果から,音声環境が視聴覚間相互作用に及ぼす影響は限定的である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オンライン実験の実施環境が整い,一定の成果を上げることができた。また実験室での実験も徐々に再開できつつあり,成果の公表も進んでいることから,進捗状況はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きオンライン実験と実験室実験を並行しておこない,得られた成果については学会発表や誌上発表を通して順次公表を進める。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,国内外の学会や研究打ち合わせがオンラインでの開催となり,旅費として計上していた予算に残額が生じた。 (使用計画)旅費の一部を実験用機材の購入や実験参加者のリクルートや謝金に流用するなど,他の費目での利用を検討している。
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