2018 Fiscal Year Research-status Report
心理学・計算科学・神経科学を統合させた計算モデルによる感情と認知の相互作用の解明
Project/Area Number |
18K13374
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
上野 泰治 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (20748967)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 加齢 / 情動 / fMRI / ニューラルネット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、興奮覚醒によって知覚機能がどのような影響を受けるか、また、その影響は加齢によってどのような影響を受けるのかを、心理学的アプローチ・神経科学的アプローチ・そしてコンピューターシミュレーションによって明らかにした。 GANEモデル(Mather et al., 2008)によると、優先的に処理されている情報は、興奮覚醒時には更に促進される。一方で、興奮覚醒時に優先的に処理されていない情報は、興奮覚醒時に処理が抑制される。つまり、Signal-to-ratio比が更に増すという予測が成り立つ。これを心理学実験で解明するために、(a) 興奮覚醒の要因 (不快な情動と条件づけられた音の呈示の有無)と、上記の(b)情報の優先性という要因(2つの刺激のうち、明瞭に呈示された刺激を処理する条件と不明瞭な刺激を処理する条件)という2つの要因を直交に操作した。課題は、2つの画像が画面左右に提示され、建物の画像が出てきた方をクリックするというものであった。結果、反応時間において予測を支持する結果が得られた。 また、GANEモデルによると、高齢者はGABAなどの抑制機能が低下しているため、処理の優先度に関わらず、興奮覚醒によって処理が促進されるという仮説が成り立つ。これを検討するために、高齢者の成績と比べたところ、仮説を支持する結果が得られた。 上記の結果は、神経イメージング研究によっても支持され、「建物」を処理すると期待される脳部位の活性値は、上記の反応時間と同じパタンが得られた。 最後に、GANEモデルが仮定する神経伝達物質のメカニズムを導入したニューラルネットワークモデルを構築し、上記の結果を再現した。これらの結果は、心理学的知見・神経科学的知見・計算論的知見をまとめて単一モデルで説明するものである。本研究結果は、既に論文として発表された(Lee et al., 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
行動実験・神経科学実験・加齢研究・ニューラルネットワークシミュレーションの全てを実施出来たのみならず、それを論文として発表することが出来たため (Lee et al., 2018)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上記の研究アプローチを、その他の認知機能へと拡張する。上記の研究は、二つの画像のうち、「建物」の写真を示す方を選択するという「知覚判断課題」であった。ここで、GANEモデルは、認知機能・課題を問わず、「情報処理の優先度」と「興奮覚醒の有無」の要因の交互作用を予測するところに価値がある。そこで、今年度は、この予測を記憶課題に拡張し、検討することを目的とする。行動実験のみならず、加齢研究や神経科学研究、そしてコンピューターシミュレーションを用いた、領域横断的な手法を用いる予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度は研究が非常によく進み、論文執筆まで終了することが出来た。海外学会への参加・発表よりも、この執筆活動を優先したために、旅費項目支出に大きな変化が生じたため。また、神経科学的研究を、申請者の所属校ではなく、共同研究者の機関によって実施出来たことも、経費が抑えられた理由の一つである。翌年度分として請求した助成金と合わせ、2019年度は海外学会での発表を多く行っていきたい。
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Research Products
(5 results)