2018 Fiscal Year Research-status Report
長期記憶における音声の聴覚表象形成プロセスおよび聴覚表象の性質の解明
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18K13376
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Research Institution | University of Human Environments |
Principal Investigator |
西山 めぐみ 人間環境大学, 人間環境学部, 講師 (00779770)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 聴覚的長期記憶 / 音声の記憶 / 長期記憶 / 間接再認手続き / 偶発学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,視覚的長期記憶に関する研究が急速に進んでおり,シーンやオブジェクトなどの視覚刺激の詳細な情報が長期にわたって保持されることが明らかになっている (e.g., Blady, Konkle, Alvarez & Oliva, 2008; Hollingworth & Luck, 2008) 。しかしながら,視覚的長期記憶に比べ聴覚的長期記憶に関する研究は十分に進んでいるとはいえず,英語習得については「日本語母語話者が英語音声の聴覚表象をどのように獲得していくか」という基本的な問いに対しても,いまだ明確な答えが得られていない。本研究は,日本語母語話者における日本語音声と英語音声の記憶表象形成プロセス,および,聴覚表象の性質について検討することにより,聴覚的長期記憶の性質の解明をめざすものである。 研究初年度である平成30年度は,聴覚的長期記憶の基本的な性質を明らかにすることを目的とし,日本語 (母語) の音声の記憶特性に関する検討を行った。本研究では,長期的な記憶の検出に優れる間接再認手続きを利用した (寺澤・太田, 1993) 。間接再認手続きは,第1セッションにおける刺激の学習の効果を,数週間後に実施される第2セッションの再認テストの成績によって評価するというものである。刺激として低頻度語(実験1),および,無意味綴り(実験2)を用い,偶発学習条件下における音声情報の長期持続性について検討した結果,偶発学習事態 (記銘意図のない状況下) においてたった2回呈示された音声情報(低頻度語,無意味つづり)の記憶が3週間後にも保持されていることが明らかになった。この結果は,聴覚的長期記憶が視覚的長期記憶と同様に非常に頑健であることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画初年度について,当初の計画通りの実験を実施し,得られた研究知見については国内外の学会において発表を行っていることから,おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の実験では,実験実施以前の参加者の経験による影響を排除するため,日本語音声刺激として低頻度語,および,無意味綴を用いた。日常生活では同じ単語を繰り返し何度も耳にすることがあることから,日本語音声刺激として高頻度語を用いた場合に同様の結果が得られるかについて検討する必要がある。そののち,当初の計画の通り,研究計画2年目に予定している英語の音声刺激を用いた実験を実施し,日本語音声刺激を用いた研究結果と比較を行う。なお,これらの実験において,実験条件や手続きの設定に不備が見つかった場合はすみやかに実験を中止し,当該部分を改善した後,再度実験を実施する。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況として,計画当初購入を予定していた物品について,同スペックでより安価な製品を購入することができたこと,無償で実験に協力をしていただくことができたため実験に係る人件費・謝金が発生しなかったこと,また,初年度は日本語音声を用いた実験であり,音声データの作成協力者および専門的助言者に対する謝金が発生しなかったことが挙げられる。次年度は英語音声を用いた実験を計画しており,専門家による助言および英語のネイティブスピーカーによる音声データの作成が必要であることから,未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(2 results)