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2020 Fiscal Year Research-status Report

K3曲面の周期による新しい保型形式の構成

Research Project

Project/Area Number 18K13383
Research InstitutionKanazawa University

Principal Investigator

永野 中行  金沢大学, 数物科学系, 准教授 (30707873)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2022-03-31
KeywordsK3曲面 / Abel多様体 / 保型形式 / 二次形式 / 超幾何方程式
Outline of Annual Research Achievements

前年度までの研究に引き続き,Kneser条件という二次形式の整数論的な条件を満足する格子についての保型形式を,K3曲面の周期写像で構成する研究を行った.特に,それらの中で最も簡単な格子の場合に明示的な構成の研究を完成させた.この結果は本年度内に論文として出版された.
次に,符号数が(2,4)の奇格子についての保型形式をK3曲面の周期写像として構成した.この結果は,佐々木武氏-松本圭司氏-吉田正章氏による(3,6)型超幾何方程式をGauss-Mannin系に持つようなK3曲面の研究と関係する.今回の結果により,従来は非常に複雑な幾何学的考察で計算された(3,6)型超幾何方程式のモノドロミー群を,格子偏極K3曲面のモジュライから計算できるようになった.この結果は植田一石氏(東大数理)との共同研究として執筆され,本年度内に受理された.また,別の論文で一般の楕円K3曲面が定める周期写像が与えるBorcherds積についても研究した(arXiv:2102.09224).
更に,Kneser条件を満たす格子についての結果を推し進め,K3曲面の周期写像とユニタリ群SU(2,2)に関するHermitianモジュラー形式の関係を示し,周期写像の逆写像をDern-Kriegが与えたテータ関数で明示的に表示した.この結果は楕円曲線の周期写像の逆写像が楕円モジュラー形式を与え,それがJacobiのテータ関数で表示されることの自然な拡張を与えている.この結果は志賀弘典氏(千葉大理)との共同研究として執筆された(arXiv:2004.08081).更に進んで,ある単純K3特異点が定めるK3曲面族が,arXiv:2004.08081で考察したK3曲面族の二重被覆になっており,主偏極Abel曲面のKummer曲面族を自然に含むことを示した.この結果も論文にまとめられた(arXiv:2012.11954).

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の研究計画における本年度までの研究目的は,昨年度までに得られた研究手法をより広い場合に適用して新しく保型形式とK3曲面の周期についての結果を得ること,また今までの研究で得られた結果を整数論に応用する足掛かりを得ることであった.
本年度は昨年度までに培ったオービフォールドの代数幾何学的手法を更に多くの場合に適用することができ,論文(arXiv:2102.09224)をまとめることができた.また,今年度は昨年度までの結果と,テータ関数やKummer曲面などの整数論で重要な数学的対象との明示的な関係も新しく得ることができた(arXiv:2012.11954).これは今までの結果を整数論に応用する際の確実な足掛かりになると期待される.
以上の理由により,研究はおおむね順調に進展していると考える.

Strategy for Future Research Activity

今年度得られたテータ関数及びK3曲面の周期との関係の結果から,複素鏡映群の不変式がテータ関数を媒介にして緊密に連携するようなK3曲面の系列の存在が予想される.これは研究計画立案時には想定されなかった状況であり,A.Clingher氏,C.Doran氏,A.Malmendier氏らの結果も併せて理解することを可能にし,K3曲面と保型形式についての新しい見地を与える可能性が高いと予想している.今後はこの新しい見通しに基づき,複素鏡映群に詳しい代数的組合せ論の研究者との研究情報の交換を行い,更に今までの研究で得られたオービフォールドの代数幾何学の技法も用いつつ,新しい現象の発見に向けて研究を進めていきたい.
また,本研究者は,Bianchiモジュラー・カスプ形式などのLanglandsプログラムで近年重要な役割を果たすようになってきている実保型形式をK3曲面の周期で捉えることができるのではないかと予想している.今年度までに得られた結果を用いた予備的な考察を進めており,幾つかその目的に応用できそうな見通しを得ている.また,今年度新しくBorcherds積についての結果を得る際に用いた手法は,カスプ形式を構成する際において応用される可能性が高い.Bianchi モジュラー形式の専門家であるH.M.Sengun 氏(Univ.Sheffield)と情報交換を緊密に行いながら,この長期目標の達成に向けた研究も引き続き進めたい.

Causes of Carryover

COVID-19の影響により,本年度に計画していた研究発表のための出張や,研究打ち合わせのための出張・招待を実施することができなかった.そのために次年度使用額が生じた.COVID-19がおさまった時点で研究発表や打ち合わせを再開する計画である.また,もし当面この状況が続きそうであれば,当初予定されていた出張旅費分を用いて,オンラインでの研究打ち合わせを円滑にするためのパソコンやその周辺機器を購入し,研究が問題なく進展するようにしたい.

  • Research Products

    (3 results)

All 2021

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Inverse period mappings of K3 surfaces and a construction of modular forms for a lattice with the Kneser conditions2021

    • Author(s)
      Atsuhira Nagano
    • Journal Title

      Journal of Algebra

      Volume: 565 Pages: 33-63

    • DOI

      10.1016/j.jalgebra.2020.07.027

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] The ring of modular forms of O(2,4;Z) with characters2021

    • Author(s)
      Atsuhira Nagano and Kazushi Ueda
    • Journal Title

      Hokkaido Mathematical Journal, to appear

      Volume: - Pages: -

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 複素鏡映群とK3 曲面の系列を用いた保型形式のモジュライ解釈2021

    • Author(s)
      永野中行
    • Organizer
      北陸数論セミナー

URL: 

Published: 2021-12-27  

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